掌編小説 | ナノ


▼第九夜 「人面犬」

まあ、百話もあったら絶対どっかで出るだろ。
人面犬。

犬塚家でも、たまーに話題になるんだけどよ、あれっておかしな話だよな。
黄昏時に出くわした犬が振り返ると、それはなんと人の顔をしていて話しかけるらしい。

ここにいるメンツは中忍試験の予選を見てたから覚えてるかもしんねーけど…赤丸が変化したって、しゃべれはしねェんだ。
見た目は人間になれても、人語は操れない。
口寄せ動物なんかは話せる奴らも多いみたいだけど、それは修行を積んだ特別な奴らだけだ。

だから、そのへんを歩いている動物が話せるなんてありえねーってずっと思ってたんだが…。
人間、この目で見ちまうと、ころっと意見が変わるもんだな。

アカデミーの帰り道だった。
オレは暗くなるまで山で遊んで、急いで家に帰ろうとしていた。
そしたら目の前に一匹の犬が現れた。
そのとき赤丸を連れていなかったから、てっきり迎えにきてくれたもんだと思って、オレはその犬を抱きあげた。
そんで顔をのぞき込んだら…。

人面犬って、人の顔をした犬、って思ってるかもしんねーけど、それは違うぜ。
何となく、犬を飼ってるからか分かるんだ。

――あいつら、犬の身体をした人間だ。

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