掌編小説 | ナノ


▼ヒナタ)絆のかたち

日向家の廊下には、いつも緊張感が漂っていた。
例えすれ違うのが使用人であっても、ヒナタは身を縮こまらせるのが常だった。

しかしその日、任務から帰ったヒナタは、一度部屋に戻ったにも関わらず、誰かを待つように廊下にたたずんでいた。
視線の先には、道場がある。
激しい修行の音は外まで漏れていた。
頬にできた切り傷を、ヒナタはそっと絆創膏の上からなでる。
と、ふいに音が止み、扉が開いた。

「あっ…ハナビ……」

駆け寄ってきたヒナタに首を傾げ、妹のハナビが立ち止まった。

「私の部屋に、入った…?」

「…じきに夕食の時間です。早く行きましょう」

質問には答えず、その場を去ってしまう。

ハナビはすっかり寡黙になった。
かつて一緒に遊ぼうとねだりに来ていた妹はもういない。

「ごめんね、ハナビ…」

姉妹の壁を作ったのは私だ、とヒナタは思う。
だがいつからだっただろう。
ヒナタが傷だらけで帰宅すると、部屋の中に薬箱が置かれるようになっていた。
この縁だけは、何があっても守りたい。

「お姉ちゃん…もっと強くなるからね」

ヒナタの目は、まっすぐ前を見据えていた。

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