掌編小説 | ナノ


▼ガイ×文字入力

木ノ葉広しと言えど、携帯電話の電話しか活用しないユーザーは、ガイくらいのものだろう。

豪快な技を得意とするこの忍は、ちまちまとした作業が苦手らしい。
そのため文字を打つことを妙に毛嫌いしている節がある。
不慣れがたたり送信前に電源ボタン勢いあまって二連打、努力を一瞬でふいにしたなんてこともしばしばあったとか。

そして気づいたのだ。
電話で用件を伝えた方がずっと早いと。

「でも仮にも忍が、任務内容を口にするのって、ねぇ」

初めにガイのその姿勢に渋い顔を見せたのは、彼と付き合いの長いカカシだった。

近年、メールの自動暗号化は各国技術が進んでいる。
しかしそれに比べ音声の処理技術はあまりに未熟だった。
万一盗聴されようものなら情報は垂れ流しも同然というわけだ。
しかも班員の数だけ繰り返し連絡するとなると、聞き漏らした箇所までしっかり補完される危険がある。

「しかしだな…どうもメールは性に合わんのだ…」

指摘されるたび弱気に反論するガイだったが、ついに先日、部下にまで詰め寄られたとかどうとか。
その噂は本当のようで、とある日の上忍待機所にて、取扱説明書を片手ににらめっこを始めたガイが目撃される。

「やー、ずいぶん頑張ってるねぇ」

「…メール起動のキー位置くらい教えてやろうって奴はいないのか」

「だって黙って見てた方が面白いでしょ」

カカシやアスマといった馴染み深い面々に生暖かく見守られ、数年ぶりの操作に手間取るこの男、数十分後にようやくメールの作成画面にまでたどり着いた。
そしてさあ文章を作成するぞという段になって、

「あー、さ、しー、たー、なにぬね、のー、なに、わーをーんー、まみむー、は」

「――ッ!!」

待機所にいた全員が耳を疑った。
しかし場の空気が凍りついたことに、肝心の本人だけが気づいていない。

「かきくけごー、か、き、くー、はひー、なに、た、ち、つ、か、きー」

さらに続けられる情報漏洩に、誰よりも早く我に返ったゲンマの指示で、ガイは一斉に取り押さえられた。
その後、三代目火影はこの事実を重く受け止め、ガイの携帯没収期間は一年に及んだという。

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