掌編小説 | ナノ


▼ネジ×覗き見防止用シート

何気ない行動が、誰かの気分を害することがある。
そしてそれが身近な者の悪意なき裏切りだったりすると、なおさら堪えるものだ。

「ネ、ネジ、これはたまたまでしてっ」

「リーの言う通りよ!前の携帯、画面が傷つくの早かったから、本当にそれだけだからね!?」

「…何も言っていないだろ」

時刻は午前七時。
子どもたちが遊びにくる前の公園はしんと静まり返っていて、その前を流れる川のせせらぎが耳に心地好い。
と思ったのも、数分前までの話だった。
今や携帯を片手に熱弁を奮う二人を、朝からよくこんなにテンションが高いなと、ネジは白々しく眺めていた。

「でも絶対に怒ってますよね」

「確実に普段の三割増しで無愛想ね」

急にひそひそ声に切り替えても、手を伸ばせば触れられる距離にいる二人だ。
聞こえないわけがない。

事の発端は、リーとテンテンの雑談にあった。
二人は修行前の集合場所でガイを待つ間、共通の話題を見つけひとしきり盛り上がった。
そして隣で会話を聞きながらも参加してこないネジに気づいて、ハッとする。

「オレは怒っていないと、そう宣言すれば納得するのか?」

ネジの気迫に、二人はたじろいだ。

「そういう問題じゃないけど…」

口ごもるテンテン。
その姿からだけでも、申し訳ないと思っている気持ちは十分に伝わってきている。
ネジはフッと口元に笑みを浮かべた。

「オレはべつに何も気にしちゃいない。ただ…」

「ただ?」

「ヒナタ様の班なら、こんなことをしないだろうと、そう思っただけだ」

「…………」

――二度あることは三度ある。

「遅れてスマン!」

カカシでもないのに珍しく遅刻をしてきたガイは、両腕を極限まで振り、ダッシュで登場した。
その手に携帯が握られていたことに気づいたリーは、嫌な予感が胸をよぎる。

「いやぁ、昨日のぞき見防止用のシートを買ったんだが、これがけっこう貼るのが難しくてだな。お前らは分からんだろうが、まっすぐキレイに貼るにはコツがあって、ここのところをこう…」

三度まで耐性のある仏の顔をかろうじて理性で保ち、こめかみを痙攣させながらも努めて笑顔でいようとするネジ。
リーとテンテンはチームメイトの痛々しさを間近で感じ、かといって空気を読まずにタブーを連呼する己の師の暴走も止められるはずもなく――ガイ班はその日、朝からお通夜のような空気を背負ったまま演習場へと赴いた。
その中で、ガイだけが高らかな笑い声を響かせ続ける。

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