▼チョウジ×おサイフケータイ
女の買い物時間は長い。
少なくともチョウジの常備していたお菓子が底をつくほどには。
木ノ葉の店を縦横無尽に歩き回り、散々迷った挙げ句、最終決定が下されたのはすでに日も傾き始めていた頃だった。
「あーあ、歩きすぎて足疲れちゃった」
「じゃあさっさと帰ろうぜ」
「ボクはお腹が空いた」
「…なんか食ってくか?」
いのの買い物に付き合わされたことに対する哀れみからシカマルがそう言うと、足の疲れはどこへやら、いのも便乗して甘味処へと向かう。
その足取りは軽かった。
「でもさっきの買い物であんまりお金ないし、お腹にたまるものは頼めそうにないわね」
「あ、それなら大丈夫。ボクが注文にいけば割り引ききくよ」
「へぇ、なんで?」
「この店最近おサイフケータイのシステムを導入して、今はそのキャンペーン中なんだよね。白玉あんみつなんか半額だよ」
「さすがチョウジ、ぬかりねェな」
「美味しいものは安く仕入れて少しでも多く食べたい…そのために努力を惜しまないのは当然の行為だよ」
「じゃあ私、その半額のにする!後で精算するから会計よろしく〜」
「シカマルは?」
「オレもそれで」
「分かった、じゃあ注文するよ」
チョウジはしばらく携帯を操作し、注文商品とその個数を入力していた。
それからテーブルの上に置かれていた機械にそっとかざすと、チャリンという電子音とともに支払いが終わる。
人件費削減のおかげで通常より安い価格で商品を提供出来る仕組みらしい。
そして白玉あんみつが運ばれてくるまでの間、今日買ったアスマへのお返しに議論が白熱したりしなかったり――ようやく運ばれてきたときにはいのもシカマルもちょうどよく空腹で、しかしそれでも驚きで目を見張った。
「…チョウジ、注文ミスか?」
「え、違うけど?」
「じゃあなんで六つも注文してんの?」
「だって半額だから一人二つずつで、ほらぴったりでしょ?」
頬を引き攣らせる二人。
世間では通らずとも、チョウジの中では覆ることのない完璧な理論。
悪気のないチョウジに、シカマルは頬杖をついていたその手で思わず額を押さえた。
「そうだよな、チョウジ。お前、カロリー50パーセントオフの飲料水だったら、二本買うタイプの奴だったよな…」
諦めた風のシカマルの隣で、いのも小さくため息をついたのだった。
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