掌編小説 | ナノ


▼第六十夜 「まとわりつく虫」

以前、自称霊感があるという男性から、こんなことを聞かれた。
油女一族の寄壊蟲はチャクラを吸い取るらしいが、生気を吸い取る虫もいるのか、と。
よくよく話を聞くと、虫の中には霊的な…死に神のようなものもいるのか、という質問だったらしい。

その男性は、医療品の営業だった。
職業柄よく病院に顔を出していたが、虫にまとわりつかれた人を見かけると言っていた。

初めは体温が高い人で蚊にたかられているのかと思ったがどうも様子が違う。
虫を振り払う動作もしなければ、周囲の人もまるで気づいていない。
しかし日に日に虫の数が増えていく。
患者の顔色も悪くなっているように感じた。

どうもこれは死期が近い人間にまとわりついているか、生気を吸い取っているに違いない。
男性はそう思ったらしいが、まさか殺虫スプレーをかけるわけにもいかない。
そこでたまたま縁のあったうちを訪ねてきたそうだ。
結局、専門外の相談に、油女一族として役立つ助言は出来なかったようだったが…。

――まるで死人にたかるハエのようだと言っていた、その言葉が今も忘れられない。

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