時空の死神 | ナノ


▼ 2.出会い-後編- (1/10)

里があの少女を受け入れてから、既に一週間が経とうとしていた。
火影へソラの経過を報告しようと思っていたイルカは、たまたま任務帰りのナルトに出くわした。

「イルカ先生、まだ家帰んねーの?」

「ちょっと用があってな」

「じゃあオレも時間潰してっから、帰りに声かけてくれってばよ」

公園に木ノ葉丸を見つけたナルトはそちらに向かって走り出す。
しばらく立ち止まって様子を見ていたが、あのナルトがチビたちに囲まれて年上ぶっている様子が、イルカにはなんだかおかしかった。
暗くなる前に帰れよと一声掛けてから火影室を目指す。
先に入室していたカカシを交え、報告を済ませたが、進展は何もなかった。

今はまだ、あの子に帰る術はない。

思わしくない結果に落ち込んだイルカは、気分を替えようとナルトを一楽に誘った。
夕食にはまだ早い時間だったこともあって席はがら空き状態。
端に詰めて二人で座ると、注文を聞いたテウチがさっそく作業に取り掛かる。
それを見計らってナルトに話かけた。

「なぁ、ナルト、お前いつまでオレん家にいるんだ?」

「んー…あいつが引っ越すまで?」

「…………」

あの日、ナルトは散々わめき散らし、ソラを階下に住まわせることを反対した。
しかし火影の決定がナルトのわがままで覆されることもなく。
ソラは予定通りナルトの下に越してきた。
以来、ナルトはイルカの家に入り浸っている。

「ほら、ソラもそんなに嫌な奴じゃない。そろそろ戻った方がいいんじゃないか?」

「はっ、あんな奴のどこがいいんだってばよ。オレはぜってー帰んねーからな」

「…………」

こんな具合でナルトがソラに対して拒否反応を示すから、任務も二人の睨み合いで上手くいかず、ソラはイルカの職場であるアカデミーへと通うことになった。

とはいえイルカにも授業がある。
時には時間を合わせて一緒に昼食を摂りもするが、それ以外は大抵ソラと離れて過ごしている。
空き時間のある誰かしらがいつも職員室で付き添っているとはいえ、楽しく談笑するでもなく、ソラはずっと本を読んでいるそうだ。
何やらこの里の歴史書を読みあさっているらしい。
過去に自分と似た例がないか調べているのだろう。
教師陣は日に何度も違う本を要求され、すっかりくたびれていた。

一般人の情報源といえば、主に書店で売られる出版物と図書館の所蔵物になる。
規模でいえば図書館の方が圧倒的に大きいが、そこに置いてあるのはかつて書店で販売されていた書籍と、数種類の雑誌。
質に大差はない。
だがやはり図書館の方が忍術に関する本も豊富に取り揃えてあり利用率は高い。
大抵の用事はそこで間に合うが、里外の者となれば閲覧は制限される。
ソラが欲しい情報が得られていないのも無理はなかった。
しかしそれを知った上で、それでもじっとしていることは出来ないと動くソラを、大人しくしていてくれればいいのにと思う者はあっても、実際に止める者は誰もいなかった。

あの子がアカデミーに通うようになってから何日経っていただろうか。
一度、イルカは忘れ物をして、授業中に職員室に戻ったことがあった。
そのとき、ソラは人目を避けるように背を向けていた。
不審に思ったイルカは通り抜けざまに顔を確認した。
ソラは、泣いていた。
書類と睨み合いをしている他の職員たちは気づいていない。
声も出さずに、ただ静かに涙を流すソラ。

このときだ。
イルカがこの女の子を信用したのは。

人知れず苦しんでいるソラを見ていたら、昔のナルトにだぶって見えた。
今のソラも、独りでいることに慣れた振りをして、無理をしている。
あの悲しさは演技なんかではない。
なぜか心からそう思えた。

そうと分かれば、ソラを救ってやれる方法は二つある。
一つは、もちろん帰る方法を見つけてやること。
だがそれは手掛かりのない今は難しい。
そうなると重要になってくるのが、ナルトだ。
ナルトは歳も近いし、何より同じ悲しみを背負っている。
誰よりもソラを理解してやれるだろう。

だが――

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