時空の死神 | ナノ


▼ 2.出会い-後編- (2/10)

「なぁナルト。何がそんなに嫌なんだ?」

「…………」

「ソラはこの世界に来たばかりで精神的に不安定なんだ。出会い頭に口が悪かったのも仕方ないさ」

「…イルカ先生」

「ん、なんだ?」

「なんでそんな、あいつの肩持つんだってばよ」

ぼそりとつぶやくように言うナルト。
その言葉には、信用していたイルカにまで裏切られた、そんな悲しみもにじんでいるようだった。
イルカはナルトの横顔を見て、一瞬だけ罪悪感に見舞われた。

「そりゃあ、火影様からソラのことは頼まれてるし…」

「じゃあなんで、病院にいたとき、反対したんだってばよ。あいつが危険かも知んねえことには変わりないだろ?」

ナルトにしては上手い切り返しに、イルカも言葉が詰まる。
確実に痛いところを突かれた。

本当は、適当にしゃべって丸め込むつもりだった。
ナルトなら、十分も続けて話していればきっと何を話してるのか分からなくなり、最終的になんとなく分かったふりをして納得すると思っていた。
だが今回ばかりはそうもいかないようだ。

ナルトは完璧にソラを敵視している。
それがいつものわがままでないことだけはイルカにも分かる。
きっとそれは、ナルトの譲れない部分なのだろう。

今のナルトに上辺だけの言葉は響かない。
そう思ったイルカは、小さく溜め息をついてから、観念して本音を口にした。

「…ソラはお前と同じだからさ」

「は…?」

ナルトは目線を手元から、イルカの方に向けた。

「ソラはお前と同じ“独り”なんだ。だから、ほっとけないんだよ」

「独り?」

「そうだ。確かにソラにはお前と違って家族がいるかもしれない。だけどな、それはここじゃない、べつの場所だ。帰れる保証もない、遠く隔たったところなんだよ」

イルカは、ナルトに話をしながら、ついさっきまでそばにいたソラに想いを馳せた。

ソラの瞳は、名前どおり、空のように澄んでいた。
ちょうどナルトと同じ青だ。

しかし、その澄んだ瞳は、この世界のどこも映してはいない。
そのことを、イルカは知ってしまった。
知ってしまったから、助けたくなる。

「それでもオレは、あいつを認めらんねぇ…認めちまったら、ダメなんだよ」

「なんでだ?」

「だって、あいつってば、何もかも諦めた目、してた。そんなの認めちまったらオレもあいつも前に進めねーんだ」

「ナルト?」

「あいつも辛いかもしんない、それは分かる。だけどよ、だからって嘆いてりゃいいのか?
あいつはオレの未来は決まってるみたいな言い方したけど、それでもオレは自分の言ったことを曲げねぇ、意地でも火影になってやんだ」

そう言って、額当てをきらりと光らせた。
三回も卒業試験に落ちつづけてきたナルトは額当ての重みを知っている。
その行動に、どれほど言葉にならない想いを反映させたのか。

どうやら今回は完全にオレが間違っていたようだ。
イルカはふっと笑みをもらす。
ナルトはソラを嫌っていたわけではない。
今のソラを突き放すことで、自分の運命と、それからソラの運命とに、抗っていたのだ。
それは不器用で理解されにくい、ナルトの真っ直ぐな優しさだった。

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