失敗ばかり。
【カラオケ店員】
パリーン!と音がフロアに響き渡る。
「綱吉くん?大丈夫?」
運んでいる間にコップを割ってしまったらしい綱吉くんの元に駆け寄る。
慌てて謝って、割れたコップの破片をかけ集めようとする彼の手を静止する。
「綱吉くんは厨房に戻って新しいドリンク作って部屋に持って行って。私がここ、掃除しておくから。素手で触っちゃ危ないよー。」
どじっ子体質なのだろうか。彼はよく失敗をする。一生懸命頑張ってはいるのだが、そのせいでよく先輩達に怒られては必死に謝っているのをよく見かける。
ガラスの破片やジュースを拭き集めて厨房に戻ると皿洗いをしていた綱吉くんが、私が帰ってきたのに気付くと慌てて駆け寄ってきた。
犬、みたいだなぁ。なんて思うと愛らしく思う。
予想していた通り、ごめんなさい、ごめんなさい!とひたすら謝る綱吉くんに次からは気を付けよう。と声をかける
帰り道、綱吉くんと帰る方向が途中まで一緒なため、一緒の所までは帰ることになった。
「俺、いつも失敗しちゃって‥」
「まぁ仕方ないよ。どんまいどんまい。次からは気を付けよ。お酒とかいっぱい持つと重たいもんねぇ。バランス取りにくいよね」
グラスの重さやドリンクの重さで片手で持つにはかなり重たくて、大量のドリンクを注文されると持つのだけでも一苦労だもんなぁ。なんて自分も新人だった頃を思い出して笑う。
「私もよくお皿割っちゃったりしたよー。」
「え!全然最初から出来そうなのに‥!」
「最初からなんてできるわけ無いでしょ。すんごい要領悪いもの、私。無駄に厨房から部屋まで往復したり。慣れるまで大変だけど、がんばってね。」
昔の自分を思い出しながら笑って、綱吉くんの頭をぽんぽんと優しく叩いた。
「ありがとうございます!俺、がんばります!」
笑顔で言った彼を見て大丈夫だろうなぁ。と思った。