どきどき
あなたが、お前の居場所はここだと、居場所をくれたから。だから私の居場所はずっとここで、どれだけ離れたって、ここしかなかった。離れようと忘れようとしたって私にはここしかないんだ。
「やっほーーー。」
数年ぶりに開く重い扉を軽い言葉と共に開いた。ざわつく幹部の人たちに一部顔見知りがいるとは言えあまりみたことがない部下の人たち。
名前を呼ばれるこの瞬間が気持ちよかった。あぁ、私はわすれられていないのか。よかった、とホッとした。
本当は少しだけ怖かったりしたんだよ。といったら皆は笑いとばしてくれただろうか。
もうすぐで30、40になる古株の部下が私をみて久しぶりだと挨拶をしてくれた。
まだ20になったばかりの私にとってはヴァリアーにいない数年間は、長い長い数年間だった。彼らも私がいない数年間を長いと思ってくれるだろうか。それとも意外と早く帰ってきたんだと思っているのだろうか。わからないけれど。
「今日からまたヴァリアーの幹部になります。よろしくね」
ふと、視界の隅っこに緑色が映った。幹部の制服を着ているのに、私がみたことのない顔。
ここ数年で新しい幹部だなんて1人しか聞いたことがない。
「フランくん、だね?」
「んー?」
麺を啜りながら顔をあげた。
綺麗な緑色だと思った。透き通っていて、綺麗だと。
「あんた誰ですかー」
どうやら中身はそれほど綺麗ではなさそうだけども。