再会
おいていかないで。と言われた気がした。それでも私は前に進まなくてはいけないから、縋り付く手をそっと離した。
つもりだった。
本当は離すことなんて出来ていなくて私の足は、身体は前に進むことなくいつの間にか溺れていた。コポコポと口の中から空気が漏れていって私の身体は深く深く沈んでいった。
「夢見悪すぎわろた。」
「う"ぉおい、久しぶりだっていうのに辛気臭ぇ顔してんなぁ。」
「おぉ、スクアーロ。久しぶりだね。あ、はい、これ。綱吉から日本のお土産。日本のスィーツ。和菓子だよー。」
「そんな事より早くザンザスにあってこい…一色が朝には帰ってくるっつーのに、こんな時間だからイライラして暴れまくってんぞぉ…」
ザンザスを止められるのは私しかいない。とでも言いたげなスクアーロに苦笑した。私だって怒っているザンザスはちょっぴり苦手だ。
ちゃっかり手土産は私の手から奪い取ったスクアーロの後について屋敷の奥へと向かっていく。すれ違う皆の部下達が私を訝しげに横目で覗いてゆく。
「いっぱい人増えてるねぇ。みんな私のことを不思議そうにみてる。今更ぽっと出のキャラって嫌われないかな?大丈夫かな?いじめとかない?いきなりレギュラーになったから身体怪我させられるみたいな。」
「漫画の読みすぎだぞぉ」
凄い勢いで歩いていくスクアーロの後を小走りでついていく。イタリア人、女性の歩幅に合わせる優しさくらい身につけろ。そう心の中で毒吐きながら。
屋敷の中でも一番大きくて豪華であろうドアの前に立つ。何も考えなくてもわかる。このドアを開けると何か物が飛んでくるだろうということは。
私はスクアーロの背中を押して中に入ることを促した。