一つの儀式
ザー、ザザー、と流れる波の音を聞けば少しは気持ちが安らいだような気がした。もちろんそれは気がしただけなのだが。このままこの身を海に投げ出してしまえばどれだけ楽なのだろう、と。
「う"ぉおい、何処まで行く気だぁ。びしょびしょになるつもりかぁあ!?!」
無心で海に近づいていた私はどうやらいつの間にか膝までうみのなかに浸かっていたらしい。
「いいじゃない。サンダルなんだから。短パンだし、太ももまではオッケー」
今日はまだ帰ってきたばかりで、ヴァリアーの制服ではなく、私服…俗に言う部屋着のまま海に来ていたので汚れても構わないとおもっていた。
「その瓶の中にある水はなんだぁ」
「真水。儀式みたいなものなの。こうやって流れていく水をみて今日も頑張ったなって」
今日も私はがんばって生きたのだと、コポコポと音を立てて沈んでいく真水を見ながら思う。
いつかもし、この水が潮水と混ざったのなら、私は、私もこの水のように溶けて混ざり合って消えるのだろうか。
「今日も頑張るよ。」
足に絡みつく潮水を感じて目を閉じる。
「好きだよ。」
これは儀式。忘れないための儀式。