02部屋

気付いたらベッドに横たわっていた。

「いっ……」

動こうとすると腕に食い込むような痛みが走る。
先程の拘束具がまだ付けられているようだ。

夢じゃない。

なら、わたしは拉致されて、さっきの魔法使いのしもべにされた。
ってことで合ってるかな。
……じゃあもう仕事行かなくていいんだ!
あ、でもしもべってことは働くのか。
んー、どっちもどっち。

わたしは冷静に状況を受け止めていた。

帰りたい、殺されるかも、いやだ、助けて、って普通は思うんだろう。

家族や友達はいる。会えなくなるのは寂しい。
けど仕事が嫌いで、しかも彼氏もいないから寿退社の見込みもない。
趣味も続かないし、何のために稼いでるのかわからない。
何のために生きているのかわからない。
虚しさを美味しいもので埋める、そんな生き方をしてた。

だから、どうなってもまあいいやって思っちゃう。
しもべ生活のが辛かったら帰りたいかな。

「あ、アイス…」

唯一の心残りだ。
いや、唯一は言いすぎか。

他の心残りを探していると、扉の開く音がした。

「起きていたか」

長いブロンドの髪が印象的な男の人が部屋に入ってくる。
わたしを攫った人だろうか。

机に水の入った瓶といくつかのパンを置くと、こちらに来て拘束具を外してくれた。
そして黒い布を投げてくる。

「シャワーを浴びて、これを着ろ。水とパンは自由にしていい」

淡々とそう述べて、部屋を後にする。

シャワーと言われて、部屋を見渡す。
確かに部屋の端にシャワーとバスタブ、トイレがあった。
真ん中には机と椅子が2つ。横に本棚がある。
よく見るとベッドも大きい。ダブルベッドのようだ。
ベッドの横には格子が掛かった小さな菱形の窓がある。体は通らないだろう。
薄暗い部屋だけど、動く分には問題は無い。

しもべの割には待遇が良い。

お腹が空いていたので、水とパンを頂いて、言われたとおりにシャワーを浴びる。
黒い服を着ようと広げると。

「うわ…」

薄い生地のキャミソールワンピース。

着るしかないけど、露出は多いわ透けるわで正直きつい。
サイズは不思議とピッタリだ。

着てみると、スリットが入っていて足が広げやすくなっていることに気付いた。

あれ。

もしかして。

突然に扉が開き、体が跳ねる。
振り返ると、あの人が立っていた。
わたしのご主人様であろう人が。

「整っているようだな」

黒いワンピースを着たわたしを上から下まで眺めて、「似合わないが」と添える。
わかってたことだけど、恥ずかしい。
腕で隠そうとすると、体が金縛りのように動かなくなった。
見れば、あの人がまた棒をわたしに向けている。
そのまま操られるようにベッドへ歩を進める。

「隠さなくてよい。すぐに脱ぐのだ」

やっぱり。

しもべって、そういうことか。

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