01拉致

仕事帰りにコンビニ寄って、もうすぐ家ってところだった。

黒いフードを被った人が近づいてきて、腕を掴まれて、あれ殺されるかもって思った瞬間。
視界が滅茶苦茶になって、気づいたらどこかのお屋敷のようだった。

ひどい乗り物酔いのような感覚に襲われて、朦朧とした意識の中、腕を拘束される。

周りには複数人いるようだ。
でも外国語を喋ってる。

何が起きたんだかさっぱりわからない。

さっきコンビニで買ったアイス食べたい。

明日仕事行けるかな。
休んでもいいよね。

混乱しているらしく、いろんな心配事が頭を駆け巡る。
意識が落ち着いてきたところで、1人近づいてきて、わたしを立ち上がらせた。
腕の拘束具から繋がった鎖を引っ張って誘導してくる。
足がふらつくけどなんとかついていく。

連れてこられた部屋の奥で、誰かが座っていた。

青白い肌で、毛髪は無く、鼻も無い。
人間離れした容姿に息を呑む。

ふと。
とある噂話が思い浮かんだ。

この世には魔法使いが本当にいる。
魔法使いの世界は今、闇の帝王が支配を広めている。
普通の人間を殺していくつもりだ。

ネットに無造作に書き込まれたこの話が、注目を浴びている。

だって実際に、多くの人が災害や事故で死んでる。
全部テロとかハリケーンとか理由がはっきりしてるけど、異様な発生頻度にみんな疑問を感じてる。
調べるとほんの僅かに不可解な点もあるらしい。

この人は、もしかして。

いやいやちょっと考えすぎかな。
でも今ここにいるのも瞬間移動?

魔法?

「My Lord」

わたしを連れてきた人が部屋にいた人に何かを伝えてる。
意識が落ち着いたおかげか、英語であることは理解できた。
でも早口で何を言っているかまでわからない。
あ、Japanese? わたしのことかな。

僅かなリスニング能力を掻き集めて会話に集中していると、部屋にいた人がこちらに話しかけてきた。

わからない。

息が止まりそうな数秒の沈黙ののち、その人は何やら棒を取り出して、こちらに振った。
そしてまた口を開いた。

「言葉がわかるか?」

わかる。
今何したの?

「魔法だ」

こちらの心を読むかのように答えが返ってきてドキリとする。

「今この瞬間から貴様は俺様のしもべだ」

「その身も、命も、全ては俺様の自由だ」

最後に微笑む。

そしてまたこちらへ棒を向けた。

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