08土産*

あのまま疲れて眠ってしまったんだろう。
目を覚ましたら朝になっていた。

隣にいたヴォルデモートはいない。
温もりも残っていないから、だいぶ前に部屋を出たようだ。

膣に異物感を感じて確認すれば、彼の液がどろりと出てきた。
そういえば何も処理しなかったんだっけ。

自分で掻き出しながら、昨日の情事を思い出す。
若い青年時代の姿には戸惑った。

そしてベッドでの会話。
思い出して、ズキンとまた胸が痛む。

「はぁ……」

痛みを吐き出すようにため息をついても、効果はなかった。

掻き出した液を見て、気付く。
そういえば避妊なんてしてない。

子供ができたら彼はどうするんだろう?

マグルとの、しもべとの子供なんて……明るい未来は想像できない。

悲しみを紛らわすように、わたしは本に没頭した。
本は魔法みたいに時間を溶かしてくれる。

気付けば、ヴォルデモートは3日も姿を現していない。

寂しさはハンスが埋めてくれた。
ハンスのおかげで、今魔法界がどんな状況なのか、死喰い人にはどんな人がいるのか、ヴォルデモートの敵にはどんな人がいるのか、多くを知ることができた。

ヴォルデモートといえば、杖のことを調べているらしい。

彼の中でわたしの存在はちっぽけなのはわかってた。
所詮、ただのしもべ。

わたしだって来なくても大丈夫。
むしろ抱かれずに済んで、いいくらい。

でも少しでいいから声が聞きたいな。

あ、だめだ。
やっぱり寂しい。

「ヴォルデモート様……」

ぽつりと名前を呟く。
さすがに恥ずかしくなって机に顔を伏せると。

ゴトン、
と机に何かが置かれる振動を感じた。

おそるおそる頭を上げれば、やはり待ち侘びていたその人の姿。

なんで、このタイミングなの……。

「……聞いてましたか」

眉を下げるわたしの問いかけにやや不思議そうな反応をしたことから、意外にも声は届かなかったのかと、ほっと胸を撫で下ろす。
束の間、「気分が良い」とヴォルデモートは口角を上げた。

「宙に呼びかけるほど待ち侘びていたとは」

ですよね聞こえてますよね。恥ずかしくて死にそう。

またも机に顔を伏せ撃沈するわたしを尻目に、彼は机の上に置いた紙袋をビリビリと破った。
ゴトゴトと中の物がバランスを崩して机に転がる。

「暇つぶしを持ってきた」

音がした方を一瞥すると、明らかにヴォルデモートには似つかわしくないポップなデザインが目に飛び込んできた。

「へ……?」

反対側に腰かけ、それ以上は持ってきたものに触れない。
どうやら自分で使うわけではなく、わたしへの土産らしい。

信じられない気持ちを抑えながら、呟くようにお礼を言う。

土産は、一見してよくわからないものばかりだった。
ひとまず手に触れた五角形の箱を開けてみると、中から茶色いカエルが跳び出てきて、驚きで椅子から落ちそうになる。
悪戯たっぷりの笑みを浮かべた、初めて見る彼の表情に目が離せなくなった。

どれもこれも、わたしのために?

落ち込んでいた3日間のどんよりは嘘のように晴れて、幸せに包まれる。
なんて単純な女なんだろう。

あまり見つめているわけにもいかないので、他のものを物色する。
お菓子が大半のようだ。
魔法界はお菓子も普通じゃないんだな……。

1つだけジュースのような瓶があった。
パッケージは可愛らしく魔女とハートをモチーフにしていて、液体はピンク色。
しかし品名は書いていない。

手に取ってどんなものか探っていると、ヴォルデモートがこちらに杖を向け、わたしの手の中で瓶の蓋が開く。
まだ見てただけなんだけど、飲めってことだろうか。

「いただきます……、ん、あっま〜……」

添加物で整えられたような甘みに思わず顔をしかめる。

そういえばここ、英語圏みたいだけどどこの国なんだろ?
そろそろ日本の食品が恋しいな……。

お次は百味ビーンズを堪能する。
最初の1粒はわけがわからないほど不味かった。
半泣きになりながら、味をかき消すために先程の甘いジュースを口に含む。
もう1粒無難な色の粒に挑戦するが、大して美味しくはなかった。

ここまできたら美味しい味に出会いたい。
またも口にした1粒は不味くはないのだろうがあまり好きではない風味だったのでジュースを一口。
それを何度か繰り返すうちに、頭がぼうっとして味がよくわからないことに気が付いた。

心なしか体も熱い気がする。
これはもしかしたら、風邪?

自分のおでこを触るわたしを見て、「どうした」とヴォルデモートは問いかける。

「少し、熱っぽくて」

ヴォルデモートは無言でこちらへ歩み寄り、腕を掴んでわたしを椅子から立ち上がらせると、顔を覗き込んできた。
それだけでピクリと体が跳ね、顔に熱が集中するのを感じ、いつもの風邪とは様子が違うことに自分でも気付く。

突然、耳を咥えられた。

「ひっ……?!」

それだけで目が潤むほどの甘い痺れが全身を包む。
そのまま耳の内側に舌が這うと、立っているのがやっとな程に体に力が入らなくなった。

「大した効果だ」

効果、と聞いて目を見開く。
もしかして、先程口にしたものの中に薬が盛られていたのだろうか。

と、思考を巡らすも、続ける余裕はすぐに失われた。
ヴォルデモートの手が服の上から体をなぞり始めたのだ。
勿論、耳への刺激も続いている。
自然と身が捩れて逃げ腰になるわたしをじりじりと追い詰めて、ついに背中に壁がピッタリとつく。
逃げられなくなって、彼の愛撫を享受するしかなくなった。

胸の上にとどまった手は、ふにゅふにゅとした感触を楽しむように、やんわりと乳房を弄ぶ。
それだけで心臓が早鐘のように脈打ち血が巡る感覚に怖くなり、制止の意を込め両手でヴォルデモートの体を押した。

が、逆に加虐心に火をつけてしまったらしい。
片手で両手首を掴まれ、頭の上で拘束されてしまった。

「あぁっ」

お仕置きだとでもいうように、柔らかな愛撫は終わり、胸の突起をきゅっと摘まれる。
そのまま指の腹で潰すように刺激されれば、ついに立つことが難しくなった。
そんなわたしを支えるように両脚の間にヴォルデモートが膝を入れる。
そのままどんどんと密着すると、彼の太腿が衣越しにわたしの秘部と接した。

くちゅり、と厭らしい音に目を瞑る。
彼の太腿を湿らすほどに、濡れてしまっていた。

「ふ……っ……うぅ……」

ヴォルデモートが脚を揺らせば、自然と秘部が擦られる。
これから訪れる快楽に震えるかのように、ぐわんぐわんと脳が痺れた。

「俺様の服を汚したな?」

かぷりと首を甘噛みされれば、「ひっ」と情けない声が出る。
堪らなくなったのだろう。
ヴォルデモートは力が抜けて四肢をだらんと垂らしたわたしをベッドまで運んだ。

全身が性感帯の様だった。
布が肌を擦れる感覚にまで反応してしまう。
だから、入り口を指で撫でられただけでビクンと体が跳ねた。
シーツに染みを作るほど溢れ出した液を見て、彼は愉し気に笑むと、指を中へ挿入した。

「あぁ……っ!」

始めはまばらな指の動きも、いいところを見つければそこに円を描くように集中的に攻められる。
くちゅくちゅと厭らしい音に、先程愛撫されて敏感になった耳が痺れた。
それだけでもう、登りつめるところまで来ていたのに。
急かすように親指で肉芽を軽く弾かれたのを決め手に、絶頂へと誘われる。

「はっあぁ、ぁ」
「本当にここが好きだな」

肩で息をするわたしに休みもくれない。
そのまま肉芽をこねくり回される。達したばかりでぷくりと腫れているのにそんなことをされれば、必然的に声の大きさは増す。

これ以上の快楽を知ってしまったら、もっと乱れた姿になってしまう。
自分が自分でなくなるような気がしてしまう。

「や、ぃや……!」

怖くなって必死に上げた言葉に、ぴたりとヴォルデモートは動きを止めた。
意外な行動に目を見張る。

「嫌というなら……これ以上は触れないが?」

そしてゆっくりと指を引き抜き、秘部から手を離した。

途端に大変なもどかしさに襲われる。
ひくひくと入り口が物足りないかのように痙攣した。

わたしから離れた彼の手は、自身の衣服を緩ませ、ペニスを取り出した。
既に大きくなっているそれに、わたしはごくりと唾を呑み込む。

欲しくて欲しくてたまらなかった。

「っ……ぃやじゃ、ない、……」

恥も敬語も忘れた悲痛な声に、ヴォルデモートは嬉々とした顔で問いかけてくる。

「それで?」

入り口に彼自身があてがわれるのを感じる。
ズクリと子宮が鳴いた。

「どうしてほしい?」

なんて意地悪なんだろう。

その先を口にするのはさすがに恥ずかしくて、元々潤んでいた瞳からポロポロと涙がこぼれた。
そんなわたしに構わず、ヴォルデモートはクチクチと音を立てながら自身で割れ目をなぞるが、それ以上は進んでこない。
身体はどんどん熱を増すばかりだというのに。

もう、耐えられない。

わたしは両腕をヴォルデモートの首へ回し、彼の体を引き寄せた。

「……、……いれてください……」

ヴォルデモートの目がギラリと赤く光ったかと思うと、彼が中に進み始めたのを感じる。
わたしの秘部は待ち侘びていたかのようにヴォルデモートを咥え込んだ。

「あぁぁっ」
「変わらず……締まりがいいな……」

一気に奥まで進まれて、圧迫感に呼吸が乱れる。
溢れた液が臀部を伝い、シーツの染みを広げた。

わたしの全身を揺するように彼が動くたび、奥へと押し当たって、その快楽に脳がとろける。

「ま、まって、う、あ、ぁ」
「……もう待たん……」

ヴォルデモートの腰の動きが、ペニスを子宮へぐりぐりと擦りつけるようなものに変わった。
大きな快感に思わず体がのけ反る。
気持ちが良すぎて、息が止まりそうだった。
声は上げず、ただ喉を鳴らして、わたしは2度目の絶頂の波に耐えた。

わたしが締め付けたからか、ヴォルデモートの顔も快楽で歪む。
しかし少し呼吸を整えると、またも腰を打ち付け始めた。

「う、……もうっ、! だ、めぇ……」

絶頂の余韻が引かぬまま与えられる刺激は、耐えがたく、ヴォルデモートの首に回す腕に力が篭った。
2人の距離が近づき、わたしの首筋に彼の顔が埋まる。
くぐもった彼の生暖かい呼吸を肌で感じて、胸が疼いた。

「……ナナシ……っ……」

息を吐き出すようにわたしの名前を呼んで、ヴォルデモートは果てた。

情事の最中に名前を呼ばれたのは初めてで。

愛しくて愛しくて、心が満たされる。

首に回した腕をそのまま背中に降ろして抱きしめようとしたら、何かが左腕に乗った。
驚いて彼から腕を放す。
何かと思えば、先ほど逃がしてそのままにしていた蛙チョコだった。

ヴォルデモートは身を起こし、それを片手で捕らえると、握り溶かす。
そしてそのままわたしの首、胸、腹と、上から下へなぞるように塗りたくった。

「最高に、甘いだろうな」

そして、チョコレートを舐めとるように、わたしの体へ舌を這わせ始めた。

甘いチョコレートの香りと冷めやらぬ熱に、意識が溶けそうになるのを耐えながら、わたしは彼の名を呼ぶ。

愛をこめて。

気づかれなくても、見返りがなくても、もういいと、心に決めた。

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