06青年*
「うぃんがーでぃうむ、れびおさ!」
教科書に載っていた簡単そうな呪文を試してみる。
ま、できるわけないよね。
そもそも魔法を使うには杖が必要なようだ。
よく向けられてた棒、杖だったんだなぁ。
本を読み進めるうちに、わたしはトムに好感を持った。
監督日誌以外の教科書もトムのものらしく、書き込みがされてある。
真面目で勉強熱心な性格が窺える。
でも、なんでトムの本がここにあるんだろう?
トムについて考えを巡らせていると、目の前の教科書にダンッと手が置かれた。
「マグルのくせに、魔法に興味を持ったのか?」
体が固まる。
恐る恐る、目だけ手の主の方へ動かすと、無表情でこちらを見据えるヴォルデモートと目が合った。
あまり好ましい行為ではなかったようだ。
けど怖くて、謝罪の言葉を言おうにも唇が動かない。
固まってしまったわたしを尻目にヴォルデモートは教科書を閉じる。
そしてトムの監督日誌に気が付いた。
「これは懐かしいものがでてきたな」
上に載せていた写真を手に取り、眺め出す。
少し和らいだ表情にほっとする。
そして気付いて、驚いた。
その写真に写ってるの?
「ヴォルデモート様は……」
「中心だ」
え。あのハンサム、トムじゃないの?
ヴォルデモート様なの?
「永遠の命を手に入れるために、魂を傷つけた。今の姿はその影響らしい」
「永遠の、命……」
よく物語に出てくる言葉。
でもあり得ないって認識してた、その存在。
魔法界ではあり得ることなの?
ヴォルデモート様は永遠の命を持ってるってこと?
疑問が溢れて止まらない。
「こちらの姿の方が好みか?」
しかし永遠の命についてそれ以上語るつもりは無いのだろう。
話題を変えるように、ヴォルデモートは写真の中心人物へと姿を変えた。
驚いて息を呑む。
変身もできるんだ。
目の前にいるのは写真そのままの青年の姿だった。
黒い髪に黒い瞳。17〜18歳くらいだろうか。
誠実そうな顔立ちは、将来闇の帝王になるとは到底思えない。
「わ」
ヴォルデモートは青年らしくニッコリ笑うと、椅子からわたしを立たせて所謂お姫様抱っこをした。
そしてそのままベッドへ連れて行かれる。
もしかして。
わたしに馬乗りになって服を脱ぎ始める姿に、予感が的中したことを確信した。
「若い体はいかがかな?」
「あ、」
いきなり足を開かせて、秘部に吐息をかける。
ぞわりと肌が反応した。
太腿に当たる黒い髪もくすぐったい。
チロチロと舌で割れ目をなぞられると、息が荒くなった。
彼は追い打ちをかけるように、指で肉芽を晒し、ちゅうちゅうと吸い始める。
「っ、ん〜〜、!」
痺れるような快感に身をよじる。
それを無理矢理押さえ付けて、吸い続ける。
程なくして、ビクビクと痙攣しながら果てるわたしを一瞥すると、今度は指を秘部の中へと入れ始めた。
「もうこんなに濡らしているとは」
その言葉にカッと顔が熱くなる。
確かに聞こえてくる水音は大きく、液も少し溢れ出して肌を伝っている。
「こちらの体がお好きなようだ」
2本の指で掻き回されて、快感の波に溺れながら、わたしは懸命に言葉を返した。
「どちら、も、んっ」
ヴォルデモートは動きを和らげる。
きっと続きを言いやすいように。
「どちらも、ヴォルデモート様なら」
わたし何言ってるんだろう。
おそるおそる顔を覗くと、ヴォルデモートは少し目を見開いていた。
「本当に変わった奴だ」
ポツリと呟くと、彼は若く反り立ったペニスをゆっくりと挿入する。
もう痛みは小さく、むしろ、すごく、気持ち良い。
しばらく腰を揺らすと、今度は肩に手を添えて、わたしの体を起こした。
挿入されたまま、抱きしめられるような体勢になる。
汗ばんだ肌と肌が直に触れ合って、興奮が高まる。
ちょうど彼の胸元にわたしの顔がきたので、横を向いて耳を押し当てた。
心音が聞こえる。
膣の圧迫感が大きく、苦しい。
かなり奥へと押し当てられている状態が続いて、おかしくなりそうだ。
「〜〜っ、あ、ぁ、」
更に下から突き上げられて、あまりの快感に涙が流れた。
振動に合わせて胸が揺れてしまうのが恥ずかしい。
見上げれば、目に映る青年の顔。
汗で黒い髪が額に張り付いていて、色っぽい。
なんとなく、浮気をしたときのような、そんな気持ちになる。
どちらでも良いとは言ったものの、青年の姿に違和感は感じてるんだ。
客観的に考えて、今の蛇を思わせる姿よりも青年の姿の方が魅力的だろう。
でもわたしは、違和感を感じてる。
いつもの姿に、また抱かれたいって、思ってる。
改めて、ヴォルデモート自身に惹かれていることを再確認した。
突然連れてこられて、こんな扱いされてるのに。
普通の人間を嫌って、殺している恐ろしい人なのに。
まだこの人のこと、ほとんど知らないのに。
初めて抱かれた夜のことを思い出すと、だめなんだ。
意地悪なことばかり言うけど、わたしの初めてを優しく扱ってくれた、あの夜。
酷い人の筈なのに、優しいところがあるなんて、ずるい。
「くっ」
苦しそうに顔を歪めて、ヴォルデモートは達した。
お互い息を整える。
このまましばらく抱きしめられていたい、とわたしは小さく願っていた。
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