あたしたちの喧嘩はいつだって些細な事で勃発するのである。

例えば今日。

部活から帰ってきて冷蔵庫を覗けば、牛乳パックが一本もなかった。これは一体全体どういうことか?答えは実に単純明快。むぎかぐみやのどちらかが飲んだに違いないということだ。あたしことぐみ、の三つ子の兄弟むぎとぐみやは、男子の成長期を一切無視し、女子の平均よりちょい高めのあたしの身長とそっくりそのまま同じなのである。そのことに屈辱を覚えている二人は、なんとかして身長を伸ばそうと鉄棒に掴まって三十分ぶら下がってみたり、にぼしをひたすら食べてみたり、牛乳を飲んでみたりしてるが一向に伸びる気配はなく、ここ半年、未だ空しい努力を続けている。
そしてあたしは小さい胸をどうにかして大きくしようと、牛乳を飲んでいる。のだがどういうわけか、冷蔵庫には一本も牛乳がない。

「ちょっとお!むぎむぎかみやたん、どっちが最後牛乳飲んだのさ!」

どすどすと大股で階段をのぼって、二人の部屋のドアを全開にするや否や叫ぶ。
二人は部屋で思い思いの過ごし方をしていて、いきなり訪れたあたしに対してそれぞれの表情を示した。

「…お前だなぐみや…」

「否定はしない」

「このやろーう!!バカヤロー!」

「いいじゃんか牛乳くらい」

「よよよよくないよう!あたしの胸が!!」

「ええ〜?」

「な、なんだよー!むぎむぎとみやたんなんてここ半年伸びてないくせに!!!!」

「!!!」 「!!?」

「ふんっ知ってるんだから!!毎週土曜の放課後に保健室に侵入して二人して涙ぐましい身長を計りあっていることをね!!!」

「な、何故知ってる!!?」

「あたし部活で土曜も学校行ってるから」

ちなみにラクロス部です。

「くっ…バレちゃあ仕方ない」

「ていうか伸びてんの?」

「伸びない…」

「泣かないでよむぎむぎ」

「泣いてねえよ…」

ぐしぐしと目を擦るむぎの背をさすりながら慰めていると、ぐみやが仁王立ちであたしを指差しながら叫ぶ。

「とにかく!!!ちょいちょい伸びている俺たちには牛乳は必要不可欠なんだよ!!!」

「………でも人の牛乳飲んでいいってことにはならないでしょ」

「…ですよね」

「買ってきてよ」

お前らの金でな。

「はい…」

***

「…といった感じに喧嘩ばっかりだよ」

「仲良しじゃない」

「何言ってるのミクちゃん!!あいつらはあたしの胸を成長させまいとしているんだよ!!!」

「………でもぐみちゃんCカップじゃない。…それ以上何を望むというの…?」

「み、ミクちゃんが怖いよう…」







喧嘩するほどがいい








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