×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
理想のウェディング


※あらゆる点で捏造



「ツイステッドワンダーランドには各地域ごとに様々な文化があり、特に顕著にそれが現れるのは祭礼の儀だ。身近なところで言うと、婚姻の儀礼などが挙げられる。」

トレイン先生の長い長い歴史文化の説明に、多くの学生が半分寝ながら聞いているが、私はとにかく授業についていかないといけないため必死でメモを取っていた。トレイン先生が示したページをめくると、各地域の結婚式の写真が載っている。確かに地域ごとに文化が違うようだ。私が住んでいた世界とは少し違っているものもある。

「というわけで、課題を出す。クラスメイトなどに聞いて様々な国の結婚式を3点調べてくること。来週の冒頭にプリントで提出するように。では本日はここまで。」

トレイン先生がそう言うと同時に、チャイムが鳴った。いつも時間ぴったりで驚かされる。チャイムが鳴ったと思えば隣でヨダレを垂らしていたグリムが起きて伸びをした。おい。本来ならグリムも真面目に受けないといけないんだからな!

「もー課題とかまじでだるいわ。しかも俺らの寮ってほとんど薔薇の王国出身だから別寮生に聞かないとだしさー。」
「とりあえずダイヤモンド先輩とかジャックに聞くか。」
「課題なんて面倒臭いんだゾ〜……てきと〜にパパッとやって終わらせるんだゾ。」

昼休みになったのでエースとデュースと食堂で先ほどのプリントを広げていた。ちなみに今日は三年生は体力測定なので鬼……ではなくツノ太郎とレオナさんはやや遅れてくる。つかの間の休憩というわけだ。

「この世界も国とか地域によって結婚式って違うんだねー。面白いね。」

私がそう言うと、エースがじっと私を見てきた。え、何?なんかまずいこと言った?

「お前なんか特に勉強しておいた方が良いんじゃね?」
「何で?」
「なんでって……なぁ?」
「なぁ……って……何でだ?」

エースがデュースに目配せをしたが、デュースもあまりわかっていないようだった。エースがあのなぁ、と呆れた声を出すと、隣にガシャン!と食器を置く音がした。見ると、ジャックが私の隣に座った。エースの隣にはエペルくん。要するにいつものメンツである。

「ジャック。エペルくん。」
「王族の結婚式なんて伝統も伝統だぞ。教科書通りの結婚式をしないといけねえし、ややこしい儀礼とか複数しないといけないらしい。」
「結婚式はテレビ中継とかしてて注目の的だしね……場合によっては誹謗中傷とかされそう。」


ジャックは私に向かってそう言って、骨付き肉にかじりついた。どうやら先ほどのエースの発言に対する回答らしい。エペルくんは飄々としながらジュースを飲んだ。

「?そうだろうね。え?それが私の勉強とどういう関係が?」
「うわお前ひでー奴だな。あそこまで骨抜きにさせておいて結婚しないつもり?」
「はい?」

エースは言うだけ言ってとパスタを頬張った。エースが言いたいことはなんとなく伝わってきたが、口にするのも恐ろしいので私は黙ることにした。いや、そもそも私は異世界人なわけだし、元の世界に戻りたいからここに長くいるようなビジョンはないのだ。……戻れなかったらどうしよう。い、いやいや戻れる。戻れるよ絶対に。

「そういえばナマエの国の結婚式はどうなんだ?」
「え?」
「あ、そういえばそーじゃんナマエがいたわ!教えて教えて!そしたら一個課題クリアだし!」
「俺も少し気になるな。」
「この世界じゃないところの結婚式って確かに教えて欲しいかも。」
「良いけどたぶんそんな変わらないと思うよ?服装とかはドレスとタキシードとかだからゴーストマリッジの時みたいな感じだし。」

そういえばゴーストマリッジ、ほんと大変だったな。みんな帰ってこなくなってさ。話を聞けばみんな無茶苦茶なプロポーズをしていたらしいし。ツノ太郎は知らないが、レオナさんとヴィルさん……フッ。いかんいかん。思い出し笑いをしてしまった。

「あ、でも私の住んでたところではお色直しでドレスを変えるんだけど、その時にカラードレス着るんだよね。あれはちょっと憧れるな〜。ピンクでも良いし黄色でも良いし。」
「「「……。」」」
「え、何?なんかあった?」

なぜか急に皆が無言になった。え、カラードレスの話、変だった?でもさっきの授業で見た感じだと結構個性的なドレスもあったけどなぁ。エースが「つ、続けて続けて!」と言ってきたので気にせずに続けることにした。

「あとはね、これは私の住んでるところだけど、和装ってのがあって、あ、みんなこの前キモノって授業で習ったよね?ああいうのを着る形式のものがあるんだけど、あれはやっぱ自分の地域の文化のものだしやってみたいよね〜柄も色々あって綺麗だし、何よりキモノ着てる男性ってなかなか見られないしね!」
「あー…と、ナマエは、キモノ着てる人が好きなのか?」

ジャックが何かを気にしながらそう聞いてきたので、即答で「うん!」と答えた。着物やら浴衣やらを着こなせる男の人は大好きだ。そういえば、幼馴染のかっちゃんとお祭りとか行ったな〜。わたあめとか食べてさ。あ、ちょっと恋しくなってきたかも……。元気かなぁ。

「まぁ結婚式って大変だし、好きな人と一緒にいれるんだったらなんでも良いけどさ。でも憧れちゃうよね。両親に手紙書いてみんなの前で読んだりね。」
「ほう、お前の国ではご両親にメッセージを送るのだな。しかし、どうやってご両親を呼べば良いのだろうか。」
「そうそう。あれ泣いちゃうんだよね……ってあれ。」

今なんか低い声が後ろから聞こえたような。

「何で書いた手紙渡すでもなくわざわざ全員の前で読むんだよ……。まぁお前がやりてぇって言うなら別に良いけどよ。」

聞き馴染みのあるこの声はまさか。

「つ、ツノ太郎、レオナさん、おかえりなさ〜い……。」
「ふむ、そうか。1年はこの課題をやる時期だったか。それならば僕に聞くと良い。結婚式は何度も何度も見ている。」
「わ、わーありがとう。」
「3つだろ?コイツらに適当に聞いて後は俺が教えてやるよ。王族の式なんてそうそう聞けねぇぞ?ナマエも聞いといて損はねぇ。」
「そ、損ね……損無いですよね。ハハ……。でもこの課題みんなでやろうと思ってて、さっきまで話してたんですけど……。っていない?!」

さっきまでいたはずの同級生は忽然と姿を消していた。遠くの方に食堂の食器を返しに行く後ろ姿が見える。う、裏切り者……!さっきまであんなに仲睦まじく話していたじゃないか!ちょっとくらい一緒にいてくれてもさ!さぁ!

「で?お前の国の結婚式について聞かせてくれよ。俺の国のことは後でゆっくり教えてやるから。」
「え、な、なぜ。」
「なぜって、なるべくこういうのは花嫁の意見を聞いた方が後腐れがねぇって義姉上に口酸っぱく言われてるんだよ。」
「へ、へー……。」
「僕のところでは黒のドレスを着るのが伝統だから難しいかもしれないが、ナマエが望むのであればどんな色のドレスも用意しよう。」
「ん?うん、あ、ありがとう……。」
「キモノ?でもなんでも着てやるよ。ナマエの好きにすれば良い。」

さっきから思っていたけどこれは何か物凄い方向に話がいってますね!うん!しかしこんな風に好意的に語ってくれているのを聞くと無碍にできず曖昧な返事しかできない自分が憎い……!それにしてもこの二人こうなってくるとそろそろさぁ、

「……キングスカラー、キモノは"きちんと"着こなさないといけないものなのだぞ?一年中シャツのボタンを緩めて着ているようだが、そんな野蛮なお前には難しいのでは?」
「ハッ勝手に言ってろ。お前こそただでさえ辛気臭えのに真っ黒のウェディングなんか余計辛気臭くなるんだろうなぁ。性格通りネチネチした結婚式になりそうでなにより。」

ほらこうなったよ!勘弁してよほんともー!私がこういうややこしいことをしてしまったのが悪いけど!険悪になるんだったら私を挟まずやってくれ。ほら、みるみるうちに周りから人が消えていく……。あ、待って、ヴィルさんと目が合った。ちょ、この状況なんとかしてくれませんかね?!と熱い視線を送る。

「ナマエ、私は体のラインが出るドレスが好きだからボディメイク頑張るのよ。」
「さいですか。」

そう言い残してスタスタと去っていくヴィルさんの後ろ姿を、レオナさんとツノ太郎に挟まれながら見ることしかできなかった。

「俺はAラインが好き。」
「僕はプリンセスラインが好みだ。」
「さ、さいですか……。」