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- ナノ -
早くこちらを選んで欲しいエース


好きな所。
面白い所、
結局何でも許してくれる所、
笑ってる所


嫌いな所。
頑固な所、
怒ったら怖い所、


後は、
ふとした時に寂しそうな顔する所。


「エース、エース!」

馴染みのある声にパチリ、と目が覚めると、目の前には先程まで夢に出ていた奴が心配そうに俺を見ていた。
周りを見ると次の移動教室の準備なのか、クラスメイトが続々と教室を出て行っている。
どうやら眠りこけていたらしい。呪文のような魔法史は、昼休み後は特に眠りを誘うのだ。
目を覚ましたにも関わらず未だにボーッとしている俺を見て不安になったのか、ますますなまえの眉が下がった。

「エース、どうしたの?具合悪くなった?」
「…いや?寝すぎてボーッとしてただけ。」
「そうだよね。バカは風邪ひかないし…。」
「おい!」

心配してくれたのか、って若干嬉しかったのに、すぐに俺を貶しやがった。コイツほんとかわいくねー。
オレが元気なのを確認した後、オレを放ってサッサと歩いていくなまえを睨みつける。
コイツとはいつもこんな感じだった。オレが揶揄って、なまえがむくれて、なまえが仕返しして、オレが苛立って。
出会った時もそんな感じだった。オレがあいつのことをちょっと揶揄ってやろうと思って声を掛ければ、いつの間にかいつも一緒にトラブルに巻き込まれるようになった。いつも一緒に笑って、怒って。こんな日々が何となく続くんだろーな。オレはいつもそう思っているんだけど。





「今日のホームルームは以上!明日は授業参観の参加の有無のプリントを忘れるなよ!」

クルーウェルせんせーがそう言ってクラスメイトが散りじりになる。そういえば授業参観のプリント配られてたな。多分カバンの奥の方でぐちゃぐちゃになっている。あーやだなー。母さんはまあ来るだろうけど、下手したら兄貴が来るかもしれない。兄貴が来たら面倒そうなんだよな。だってオレの横に常に、いるはずのない女子がいるわけだし。ちら、となまえを見る。なまえは無言でカバンの中を片付けていた。…あー見なきゃ良かった。気分悪。

「…なぁなまえ、今日トレイ先輩がガトーショコラ焼いたんだってさ。ハーツラビュルで食べよーぜ。」
「え?良いの?」
「良いに決まってんじゃーん。その代わり今日の魔法史のノート見せてっ。」
「もーちゃっかりしてんだから…。」

わざとらしく顔の前で手を合わせれば、なまえは呆れたような顔をした後、ふふ、と笑った。
そーそー。それで良いんだよ。
教室の扉の方でデュースがオレたちを呼んだ。横にいたグリムは早くしろと怒っている。はーい、となまえがデュースの方に駆けていった。先程までの表情はもう無かった。オレはなまえの笑った顔が好きだ。なんてゆーの?見てると何かムズムズするというか…。
でもオレはアイツの寂しそうな顔は嫌いだ。デュースが母親の話をする時、オレが兄貴の話する時、学校で何か行事がある時、時には星を見てる時みたいな何でもない日にそんな顔をする。あーあ、なまえの中に別の大事なものがあるんだろーなー。って、その顔を見るたびに思い知らされる。

「おい、エース!早く行くぞ!」
「へーへー。今行きますよーっと。」

相変わらずうるさいデュースの声に従って教室の外へ向かう。なまえと目が合ったので頭をポン、とすると、びっくりしたのか目を丸くした。何で突然そんなことをされたのか分からず、困惑した表情をしている。うん、そうやってオレのことだけ考えてれば良いよ。
早くなまえが向こうの世界のこと忘れてくんねーかなー。