×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
幼少期リドルと約束する


リドルくんはいつも勉強をしている。休み時間になれば、同じクラスの子はパーっとグラウンドへ行ってしまうけれど、リドルくんだけ残って、たぶんエレメンタリースクールではやっていないような勉強をもうやっていた。偉いな。私なんて昨日、宿題を貯めっぱなしにしてたからお母さんにゲンコツをくらった。痛い、と頭に手を当てたら、お母さんに、

「ローズハート家のリドルくんみたいに、もっと勉強しなさい!」

と言われてしまった。この街でリドルくんのお家のことを知らない人はいない。リドルくんのママってすごい人なんだって。よく分からないけれど、この街の人を救っているらしい。そんなすごい人のお家に生まれたから、リドルくんもすごい。みーんなそう言ってる。私もそう思う。私だったらあんな毎日毎日勉強なんてできない。

そんなリドルくんが、近くの公園で泣いているのを見つけてしまった。人には見えない茂みの近くで、しゃがんで顔を隠してしまっていた。体がプルプルしてるから、泣いているんだろうな、って分かった。うんうん、ここって人が通らないから、かくれんぼには最適なんだよね。ってそうじゃなくて。リドルくんの方へと近付いていく。リドルくんが笑ったり泣いたりしてるところなんて見たことない。何があったんだろうって思って、声をかけた。リドルくんは、ゆっくりと顔を上げて、目をパチパチとさせて私を見た。ポロリ、涙が溢れている。私はリドルくんと喋ったこと、ほんとうにちょっとしかなかったけど、頑張って話しかけた。

「泣いてるの?」
「……な、泣いてないよ。」
「嘘だ、涙出てるよ。」
「泣いてないって言ってるだろ!」

うわ、リドルくんが顔を真っ赤にしている。たぶん、怒らせてしまったのだろう。リドルくんのその真っ赤になった顔がなんだかおもしろくて、ふふふ、って笑うと、リドルくんはもっと怒ってしまった。

-------


リドルくんが泣いていた日から、何回かリドルくんがこの場所にいるのを見るようになった。何回も話しかけているうちに仲良くなっていって、二人でお喋りするようになった。リドルくんは、家に帰ってもずっと勉強してるんだって。偉いなぁ、なんて言えば、リドルくんは嬉しそうにした。この時間は、リドルくんの自習の時間らしい。トレイくんと、チェーニャくんっていう子と最近出会って、それから外に出るようになったけど、トレイくんっていう子のケーキが美味しいって聞いてから、毎日ケーキが食べたくなった。リドルくんのせいだ。

「ねぇなまえ」
「なーにリドルくん。」
「なまえは僕と一緒にいて、その、た、楽しい?」
「うん!楽しいよ!」
「あ、ぁ、ありが、とう。……じゃあ、僕のこと、す、すき?」
「うん!私、リドルくんのことだーいすき!」
「……!僕も、なまえのこと、すき!じゃ、じゃあ、ずーっと、一緒にいてくれる?」
「うん!」
「約束だよ」
「約束!」

リドルくんとそう言ってゆびきりをした。リドルくん、私のことすきだったなんて嬉しいな。いつも学校で会ってもずーっと勉強してて話しかけることもできないけれど、ちゃんと友だちと思っててくれたんだな!

------


今日は朝からびっくりした。お母さんが、突然この街を引っ越すって言い出したから。お父さんがお仕事で、輝石の国に行かなくちゃいけなくなったんだって。お母さんは、輝石の国行けるって喜んでるけど、私はここから離れるのがとても悲しかった。お母さんが近所の人に挨拶に行くって言って、私と手を繋いで色んな人に会いに行った。そこで初めてトレイくんに会った。ここのケーキ屋さんだったのか!

何人かに会って、最後はリドルくんのお家だった。リドルくんのママは、いなくなるなんて寂しいって言ってくれて、私にクッキー缶をくれた。同じクラスだからって、リドルくんのママはリドルくんを私のところまで呼んだ。最初は目をまん丸にしていたけど、私が引っ越すことをリドルくんのママが伝えれば、リドルくんはそのまん丸のお目目から、大粒の涙を流した。リドルくんのママも、私のお母さんも、私もびっくりして、リドルくんを見つめた。その後、リドルくんは何も話さなかった。


次の日に、あの公園の近くまで行けば、リドルくんがいた。リドルくんは私のことを見つめていた。なんだかちょっと怖くって、いつもより心臓がドキドキする。近づいて行けば、リドルくんが私の手を握った。普通のお手手をつなぐ感じじゃなくって、この前お姉ちゃんが、ボーイフレンドの子としていた握り方。捕まえられている感じがして、ちょっと落ち着かない。

「なまえ」
「どうしたの、リドルくん。」
「約束を破るんだね。」
「え…。」
「ずっと、一緒にいてくれるって、言ったじゃないか。」

リドルくんは、この前みたいに一切泣かなかった。握られている手も痛い。いつも人が来ないこの茂みに、どうして来てしまったんだろうって、思ってしまう。

「約束、したのに。」
「リドルくん、痛い、」
「謝ってよ、謝れ!」
「い、いたっ、」
「僕のこと、すきって言ったのに、僕から離れるなんて、」
「痛い、リドルくん、ご、ごめんなさい!もう、もう約束、破らないから!やめて、ごめんなさい!」

リドルくんは私をバシバシ、と叩いた。止まってくれなくて、怖くって、涙がたくさん出た。私が泣き出したら、リドルくんはピタリ、と止まってくれた。まだ体が震えているけど、リドルくんは、私の頬っぺたを撫で撫でした。お母さんがしてくれるみたいなやり方じゃなくて、ゆっくりと撫でまわすみたいな。

「…今度は約束破らない?」
「や、破りません。」
「そう、誓える?」
「ち、ちかいます」
「ふぅん…。」

リドルくんは、私の唇に自分の唇を当てた。あ、これ、お姉ちゃんが見てたドラマで見たことある。

「僕がきみをいつか絶対むかえにいくから、なまえは他の子と仲良くしないで?ね?」
「お、おともだち、つくっちゃ、だめ、ですか?」
「ううん。僕以外のおとこのひとと仲良くしないで?ね?守れるよね?」
「は、はい。まもります。」
「じゃあ、小指!」


ゆーびきーりげーんまーん
ウソついたら針千本のーます!

ゆびきりが終わったら、リドルくんはいつものリドルくんに戻った。私の小指はなんでかずっと熱くって、その熱さは、私が輝石の国に引っ越しても、エレメンタリースクールを卒業しても、ずーっと続いた。