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ラギー・激重・ブッチ


ラギー先輩とお付き合いした。告白は私からした。正直に言うと一目惚れである。食堂でグリムからサンドイッチを奪った時に彼を見て、ピンときてしまった。少し垂れた大きなお目目に、他の獣人よりも大きな耳。可愛らしい少し尖った歯。私は彼を一目見た瞬間に、かわいい!と目が奪われてしまった。それから、何度か話していくうちに仲良くなって、こっちから積極的にドーナツあげてみたり、レオナさんのパシリのお手伝いしたり、ラギー先輩となんとかお近づきになれるように頑張った。これはいけるんではないか?!と思い、ラギー先輩に告白した。彼は「良いっスよ」と言ってくれ、晴れてお付き合いをしたのが3日前。フェアリーガラで連絡先を交換し、チマチマ電話した甲斐があったってもんだ。しかし私は、自分の告白がちょっと早かったかな〜なんて罰当たりなことを考えている。

一つ、一緒に喋っていたクラスメイトに突然グーパンをかましてしまう
一つ、一緒に課題をしていた先輩のノートに大量の落書きをしてしまう
一つ、一緒に帰っていた男の子達を振り切って走って帰ってしまう

これ全部私が行った奇行として周りには認識されているが、それは違う。何故なら私は全く無意識にその行動をしているからである。そして、そんなことができるのは誰かなんて分かっている。

「ラギー先輩……!いい加減にしてください!」
「なまえくん!俺の部屋にわざわざ来てくれたんスね!いい子いい子〜こっちおいで!」

そう言われて私はまたも無意識に手を広げて彼の胸に飛び込んだ。その瞬間にラギー先輩は私を抱きしめながら、頭を撫でていい子いい子〜って言ってる。顔はもうそれは溶けそうという表現がピッタリで、自分でこんなこと言うのもどうかと思うがデレデレである。ラギー先輩、付き合う前はいつも余裕ある感じだったのに、付き合ってからは私への愛情を全く隠さなくなった。私としては嬉しいのだけど……だけど!
それとこれはまた別問題なのだ。

「ラギー先輩、私にユニーク魔法使わないでくださいよ。なんでグーパンとかするんですか、流石に酷いですよグーパンは。私の評判が下がるんですから。」
「なんのことっスか?え?ていうかなまえくん人にグーパンしたんスか?怖〜野蛮〜。」

お前をグーパンしてやろうか。そんなこと怖くてできないけれど。私は分かっている。あれはラフ・ウィズ・ミーによるものだということに。未だに頭を撫で撫でする手を振り払い、抱きしめられている体を一旦離そうと押し除けた。まだ片方の腕は背中に回っていたので、体を離すことはできていないが。

「しらばっくれないでください。私だって魔法かけられたか、かけられてないかくらい分かるんですからね。」
「チェーやっぱ分かるんッスね。」
「チェーじゃないです!やめてください!」
「だってなまえくんが約束破るから……お灸を据えてやったんスよ。」

口を尖らせて私を見るラギー先輩。ラギー先輩が言う約束とは、付き合った日にラギー先輩から言われたことであった。私は言われた瞬間に固まったことを覚えている。

『俺を裏切らないで。俺、なまえくんが他の人と喋ってたり笑ってたりするのを見るのが本当に我慢ならなかったッス。絶対他の人と喋んないで。レオナさんとか、知ってる人は我慢してあげるッス。でも他の奴は絶対駄目。俺は自分のモノが奪われるのが本当に嫌いなんッスよ。ね?ホラ、約束。』

スッと小指を出された。私は正直、うっ、と思ったが、ラギー先輩に告白したのは私だし、何かそう言ってる時の先輩の目が怖かったから、その小指を私のそれと絡めた。嬉しそうなラギー先輩は、そのまま私の腰を引いてキスをしたのだった。

そんなやりとりをしたのを思い出しながら、私はゲンナリしていた。男子校のナイトレイブンカレッジで守れるはずがないその約束は、無茶振り以外の何物でもないので、私は先輩の「約束」を無視した。しかし、先輩に目撃されるたびにユニーク魔法を使われては周りの人に迷惑かけてしまうので、私の不満もどんどん積もっていく。今日のグーパンで応えた。グーパンは酷いよ、クラスメイトだよ?そのあと彼はすごい恐ろしい目で私を見てきたし。

「シシシ、これで一人減ったッスね。」
「減ったってなんですか!私に友達が減るのがそんなに嬉しいですか?!」
「嬉しいッス。なまえくんの周りの奴がぜーんぶなまえくんに近寄らなくなって、君がただ一人になって、俺しか縋りつく相手がいなくなれば良いのにって毎日思ってる。」
「うえ、」
「ねぇ、なまえくん、俺のこと好き?」

好き〜?そりゃ好きだけど、こうやって私を責める時のラギー先輩は正直苦手だ。顔が好きだから許してるところはあるけどさ〜……。これが一目惚れの弱いところだよな、トホホ……。しかし、このままされっぱなしっていうのもなんだか悔しいし、たまにはラギー先輩より優位に立ちたい。何か私が悪いことにされてるけど、ラギー先輩が悪いじゃん?お灸を据えてやろう。

「こんなことするラギー先輩は、嫌いです。」
「………………。」
「無理ですよ、他の人と喋るなだなんて……。無茶なこと言わないでください。私はラギー先輩のそういうところは嫌です。」
「そうッスか。」

お、これはなんとか丸く収まりそうだ。良かった、やっぱりカップルには話し合いが必要なんだな……。なんて思ってラギー先輩を見れば、口は笑っているんだけど目が全く笑ってなかった。ヒィ、こ、これは付き合った時の目と一緒だ。

「ところでなまえくん。」
「は、はい。」
「これ何でしょう。」
「私の携帯……。」
「ピンポーーーン。なまえくん、俺があれだけ他の人と連絡取るなって言ってたのに取ってたね。」
「え?!い、いやでも、取るなってのも難しい話ですよね、」
「取ってたよね。」
「おっしゃる通りです。」
「うん、ハイ、消して。」

彼がニコニコしながら渡してきたのは連絡先のページである。け、消してって、え?連絡先を?

「れ、連絡先はちょっと、」
「ふーーーーん。じゃあまぁ俺が消しても良いけど……。」

途端に、私の体がグッと動き、ラギー先輩が持っている携帯の画面を触った。体が勝手に動いている。私の意思とは正反対だ。ポチ、と押したが最後、連絡先が全部消えてしまった。青ざめる私とは対照的に頬を染めて熱っぽい目を向けてくるラギー先輩。先輩は、固まる私をギュッと包み込んだ。先輩の匂いがする。私は彼の纏う匂いが、大好きだったのだ。

「……自分で消して偉いッスね、なまえくん。いい子、いい子。」
「え、わ、私じゃないです、これは、先輩が……。」
「ん?」

ラギー先輩が、ねっとりと私の頬を撫ぜる。固まって動けない私の頬に、おでこに、唇に、好き勝手にキスをしてきた。私はどうやら彼を怒らせてしまったらしい。


「ね、もう一度聞くッス。俺のこと好き?」