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翠くんに強請られる


愛を乞うの直後くらい


放課後教室に来て欲しいと翠くんからメッセージが来ていた。思わず顔を顰めてしまう。こんな表情をしていることを彼にバレてしまったらきっと面倒なことになると思い、すぐに顔を真顔に戻して、メッセージを返した。本当は物凄く断りたい。だって怖いんだもん翠くん。以前突然告白されて半ば脅迫される形で付き合うことになったが、未だに彼のことは掴めていない。私の何気ない言動ですぐに落ち込んでしまうので毎日ヒヤヒヤである。ただ落ち込むだけだったら良いんだけどね……、うん。

ガラリと一年生の教室を開けると、翠くんがそこに立っていた。スラリとした長身のシルエットに美しい横顔は、どの女の子が見てもため息が出てしまうだろう。

「なまえさん! ふふ、プロデュースお疲れ様です。」
「あ、ありがとう翠くん。」
「来てくれて嬉しいです、あ、あの……ギュッて、してもいいですか……? 」
「えっ」
「ダメなんですか」
「い、いや?!! ぜ、ぜひ! ぜひお願いしまする! 」
「なんですかしまするって……。ふふ、なまえさん焦ってる……かわいい……。」

そう言って翠くんは私を抱きしめた。大きな体に包まれるとドキドキする。悪い意味で。先程私が少し嫌がる素ぶりを見せただけでどこからかカッターナイフを取り出したのである。いつも忍ばせているのか。勘弁してくれ。

「……ね、なまえさん、今日のレッスン、どうでした……? 」
「え? 」
「楽しかったですか? 」

翠くんは私を抱きしめたまま顔を見せずに話しかけてきた。今日のレッスンのことを思い出す。今日はTrick starのみんなとのレッスンだった。同い年ということもあるし慣れ親しんだ人たちだから、そりゃあ楽しかったけれども。普段そんなこと聞かないのに何故そんなことを聞くのだ。

「……なまえさん? 」
「あ、ご、ごめんね。うん、楽しかったよ。」
「……へぇ。」

途端に翠くんの抱擁が強まる。あれ。

「み、翠くん? 痛いよ? 」
「ねぇなまえさん。お願いがあるんです。」
「な、何……? 」
「キスしてください。今すぐ。ここで。」
「え??!? 」

翠くんは私から体を離した後、私の両肩に手を置いた。手の力は緩めることがない。痛いし怖い。恐る恐る翠くんの顔を見ると、彼は私の顔をじっと見つめていた。あ、これはダメな顔のやつ。

「ねぇ、早く。」
「あ、えっ、えっと……ここは……。」
「俺、不安なんです。ここ、男ばっかりだし……さっきメッセージ送った時も顔顰めてたし……。いつか捨てられたらどうしようって……。まぁそうなったら自殺するだけなんですけど……。」
「は、はは……。じょ、冗談はやめてよ……。」
「……冗談じゃないんですけど……。ダメなんですか……? 」
「あ、いや、は、はい! します! だから目を瞑って! お願いします! 」

そういうと嬉しそうに目を瞑る翠くんの顔はめちゃくちゃ綺麗で、もう私は覚悟を決めた。だからカッターを出すのはやめて欲しい。というか、何故メッセージを見たときに顔を顰めたのを知っているんだ。