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振り向いて



何ということだ。数分前の自分を呪いたい。

「ちょっと薫、その子誰?」
「あんたこそ誰よ、薫にベタベタしないでよ!」

みょうじなまえはしゅらばにそうぐうした!
とか呑気にふざけている場合ではない。
今日は珍しくプロデュースがない日だったから放課後に何をしようかルンルン気分で帰宅していた際、せっかくだし通ったことのない道で帰ってみよう、と思ってしまったのが運の尽きである。次の角を曲がろうとした瞬間、派手そうな女の人二人が、金髪の男の人を巡って喧嘩をしているではないか。ハッキリ言って面倒臭い。もうこの道は諦めようと踵を返そうとした瞬間、

「まぁまぁ二人とも、落ち着いて〜?二人とは今度遊んであげるから、今日の所は仲直りしよ?」

とまあ何とも呑気そうな声が聞こえてきた。というかこの声は明らかに聞いたことがある。でも見つかったらもっと面倒臭いことになるので振り返らずに進もうとしたら肩を掴まれた。

「ていうか俺、今日この子と予定あるんだよね〜だから申し訳ないんだけど今日の所は失礼するね、また遊んでね〜」

嘘だろ。


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「いや〜助かった!ほんとどうなるかと思ってたんだよ〜。あそこでなまえちゃん来てくれなかったらなかなか帰れないところだったからさ。」

と言いながら羽風先輩は爽やかな、しかし胡散臭い笑顔を浮かべてきた。あの後羽風先輩に無理矢理引きずられてあの場からは撤退することはできたが、女の人にはむちゃくちゃ睨まれた。怖い。その後も羽風先輩から逃げ切ることは出来ず、何故か街のカフェテリアに連れて行かれ、パフェを奢ってもらっている。有難いが面倒臭い。私は早く家に帰ってドラマの再放送を見なければならないのだ。

「…あんまり女遊び激しいといつか痛い目見ますよ。」
「いや〜でもどうしてもやめられないね。女の子と一緒にいるだけで幸せになれるからな〜」
「本気で好きな人ができたら多少は気持ちも変わると思いますけどね。」

きっと羽風先輩は本当に人を好きになったことがないんだろう。ただ単純に女の子という生き物が好きなんだろうなぁと思って言ったら少し空気が変わった。あれ?

「……なまえちゃんは本気で好きな人がいるの?」
「いや、別にいませんけど……。今は自分のことで精一杯ですしね。」

そう言うと先輩はどこか安心したような顔をした。さっきの雰囲気は何だったんだろう、と思っていたら先輩が口を開いた。

「そう言うけどさ、本気になっても叶わない子はいるんだよ。」
「もしかして羽風先輩、本気で好きな人いるんですか?」

と問うと、ん〜どうだろうね〜と濁された。これはいるな。それでも女遊びが止められないんだから、一体どんな人なんだろうか。少し気になってきた。

「その人に本気って分かれば伝わるんじゃないですか?例えば女遊びを止めて、その人に証拠を見せるとか」
「……そうしたら本気って分かってくれるもんなの?」
「まああの羽風先輩がそこまでするんだったら分かりますよ、流石に。」

と言うと、羽風先輩はおもむろに携帯を取り出したかと思えばすかさずおそらく遊んでいたであろう女の人の連絡先を全て消した。おおう、これは本当に本気だ。


「すごいですね、まさか先輩がここまでするとは…」
「そんなにすごいことかな〜?でもどうしても振り向いて欲しいと思うならここまでした方が良いってことでしょ?」

まあ確かにここまでしたならきっと相手にも伝わるだろう、と言おうとしたら急に腕を掴まれた。何だ何だ、どうしたんだいきなり。


「ここまでしたんだから分かって欲しいんだけど、俺なまえちゃんのこと好きだよ。だから今日から一途で誠実になるから、覚悟しててね。」



え。