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愛を乞う




「先輩、俺と付き合ってくれないんだったら
俺は今からここから飛び降りて死にます」

私の目の前で物騒なことを冒頭から言ってのけたのは、後輩の高峯翠くんだ。どうしてこうなった。事の発端は数分前に遡る。

放課後突然翠くんに呼び出されたので、指定された屋上へと向かった。周りの生徒はもう帰り支度を済ませたり、各々レッスンを行ったりしている頃である。屋上のドアを開けるとなんだかいつもより緊張した面持ちの翠くんがいた。私に気付くと顔を赤らめながらこんにちは、と挨拶をしてきたので私も返事をしながら問うた。

「どうしたの?何か相談事?」
「あ、いや、相談とか、ではないんですけど…」

と、なんだか歯切れの悪い返事をした後に、何かを決心したように彼は言った。

「なまえさん!お、俺と付き合ってください…!」
「へ???!!!!」

あまりにも突然だったので変な声が出た。恥ずかしい。翠くんに告白されるとは思っていなかったため、急すぎて状況の整理が付かない。だからと言って翠くんと付き合うのは全く想像つかなかったし、そんな気持ちで付き合うのもどうかと思い、丁重にお断りさせて頂こうと私は口を開いた。

「…み、翠くんありがとう。でも私は翠くんとはお付き合いできな「何でですか?」

「な、なんでって…」
「忙しいから?他に好きな人がいるから?誰ですかそれ俺に教えてください」
「いや、そういうわけじゃなくて…」

なんだこいつ、さっきまでの初々しさはどこに行った!というくらい翠くんの人が変わってしまった。控えめに言っても怖い。というか早口すぎて何から答えれば良いか分からない。どうしようかと迷ってる間に、翠くんは屋上のフェンスの方にスタスタと歩いて行って、フェンスを越え…。え????

そして冒頭のセリフである。

「み、みみみみみみ翠くん、一旦落ち着こう!早まっちゃ駄目だよ、まだ若いのに!」
「無理です駄目ですなまえさんが付き合ってくれないなんて無理です、その上他の男の人と一緒にいるなまえさんを見るのは耐えられないです、そんなものをこの先見るかもしれないなら死んだほうがマシだ…」
「いや、私好きな人なんていないよ!」
「じゃあ付き合ってくださいよ」

うっと言葉に詰まる。正直に言って翠くんのことは可愛い後輩としか思えない、しかし今の翠くんに言ってしまえばそれこそ何かが終わりそうな気がする。私が悶々と悩んでいる間にまた翠くんが口を開いた。

「ほらやっぱり答えられないってことは好きな人がいるんスよね…。もういいです、先輩さようなら」
「ま、待って!!!わかった、付き合う!翠くんと付き合うわーい!!!」

翠くんが片足をかなり後方にずり下げてきたため私は慌てて言い放ってしまった。とたんにパァっと顔を明るくしてフェンスを乗り越えてくれる翠くん。あれ、コイツむちゃくちゃピンピンしてるな、さっきまでの鬱はどこに行ったんだ。

「嬉しいです…!先輩愛してます、もう絶対離しません…!」

そう言って翠くんは私をきつく抱きしめた。
もうどうにでもなれ。