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美味しく食べてね


ssラギーの続きっぽいもの
監督生
軽めのカニバ表現あるので注意








ラギー先輩のユニーク魔法によって、知り合いの連絡先を片っ端から消去した日からはや数日。あの日から私はラギー先輩にすっかりびびってしまい、それはもう媚びに媚びた。ラギー先輩が喜びそうなことを何でもした。具体的にって?そんなこと聞かないでくれよ。何でも言うこと聞きすぎて、こっちはラギー先輩を見るたびに体が震え上がってくるんだぞ。何で彼氏にこんな気を遣わないといけないのかなぁって思って、ちょっと頭の中に別れが過ぎったけれど、彼の顔を見るたびにその考えは吹っ飛ぶのだ。何てかわいいお顔なんだろう。何でもできて、面倒見も良い。私の彼氏サイコー。ってね。これが惚れた弱みってやつか。

「まじで私の彼氏最高なんだわ。」
「まーたラギー先輩の話かよ。それ以外話すことねーの?」

目の前で呆れ顔をしているエースは、そのままズコーとジュースをすすった。エースは珍しく部活がなかったらしく、そして私も特に予定がなかったので、放課後に食堂でお菓子パーティーのようなものをしていた。サムさんのところへ行って各々のおすすめのお菓子とジュースを買って取り留めもない話をするのは、前はよくしていた。エースと二人だけというのは珍しく、それこそ暇な同級生を誘っては駄弁っていた。ラギー先輩と付き合ってからは滅法減ったけど。まぁ?放課後デートなんて当たり前だしね?
ほぼレオナさんの部屋の片付け手伝って終わる時もあるけど。

「ていうかそれこそラギー先輩、俺と二人でこうやって喋ってんのとか大丈夫なわけ?」
「あーどうだろ?でも大丈夫でしょ、だってエースだし。」
「どういう意味だ!」

エースがガタッと机から立ち上がるのを無視して目の前のスナック菓子を食べる。流石のラギー先輩も、入学してからずっとマブダチのエースと二人で会っていたからって怒ったりはしないだろう。ラギー先輩との知り合いは我慢するって言ってくれたし。…まぁあんだけ言われたけど、その後クラスメイトとメッセージのやり取りしたり、一緒に遊んだりしてるんだけどさ。だってあんまりだよ、私クラスメイト失っちゃったら本当に友達いなくなっちゃうよ。ただでさえ飛ばされたのが男子校っていうだけでも辛いし女の子がいないのを心細く思っているのに、友達いなくなっちゃったら寂しいじゃないか。頻度は前よりめちゃくちゃ減らしたし、これくらい許して欲しい。私はラギー先輩のことは大好きだから、なるべく先輩の言うことは聞くけれど、限度ってものはある。あ、サムさんのお店の新作、どうかと思ったんだけどこれは美味しい。何枚でも食べられる。ラギー先輩にも教えてあげよう。

「ひぇ?!」
「え、なに、突然叫んでなに?!」
「け、けいたい、やばい。え、エース、ちょっとごめんね?」

ラギー先輩に教えてあげようと思って携帯を開いた瞬間である。ラギー先輩からの夥しい量の着信履歴が残っていた。メッセージも大量に来ていて、「今どこ」「おーい」「返事しろ」という内容がずーっとエンドレスに続いている。最初はかわいい絵文字とかスタンプとか使ってたけど、だんだん打つ時間間隔が短くなっているし、絵文字を全く使っていない。まずいかもしれない。確実に誤解されている……。急いで先輩に連絡したら、ワンコールですぐに出た。絶対待ち構えてたやつだ。

「ら、ラギー先輩」
「あ、なまえちゃんやっと出たっスね。何してるんスか?俺はなまえちゃんに会いたいなーって思って電話したんスけど。」
「え、えへへ、学校で勉強してたので気づきませんでした、すみません。ラギー先輩、今日はマジフト部で遅くなるって言ってたから、かかってこないかなって、思ってました。」

必死で弁明する私を見ながら、エースがうげぇ、と漏らした。ポリ、とスナック菓子を頬張る。私ももっと美味しく食べたかったな。もうたぶんこの後は無理だ。ちなみにラギー先輩は、私に連絡先を消させた日から、私のことをなまえちゃんと呼んでくれている。名前を呼ばれるたびにちょっと嬉しかったのだが、今は逆にそれが怖かった。

「なまえちゃん。」
「は、はい!」
「今エースくんの声が聞こえたんスけどどういうことっスか?」
「へっっっっ?!」
「今すぐ寮帰って来い。」
「はい。」

私は獣人属の耳を舐めていた。「サムさんのおすすめのスナック菓子めっちゃ美味くね?!やべー一生食えるわー」と呑気に言うエースの頬をつねって、急いで自分の寮へと戻るのであった。


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「お帰り、なまえちゃん。今日は俺が野菜炒め、作ってあげたっス。」

帰ってきたら仁王立ちのラギー先輩がいた。泣いて良いよね。先輩は私の腕を取って、ダイニングまで私を連れて行った。机の上には彼の料理が既に載っている。湯気が立っているので、私が帰る時間を見計らって出来立てになるように作ってくれたのだろう。その気遣いが今はとても怖い。
ラギー先輩がささっ、座って?と椅子を引いてくれたので、言われるがまま座った。ちら、と先輩を見れば、彼はずっと微笑んでいた。私が食べ出さないのを不思議に思ったのか、どうしたの?早く食べて、と私にフォークを渡してきた。どういうつもりでこれを食べれば良いのだろう。おずおず、と口に運ぶ。美味しい。先輩の料理は間違いなく美味しいのだ。気がつくと、先輩は私の向かいの席に座って、こちらをじっと見つめていた。両手を頬に当てて、濁った瞳でこちらを見ていたので、気が気じゃない。ふと、ラギー先輩がご飯を食べていないことに気づいた。

「せ、先輩」
「ん?」
「あの、先輩もご飯、食べないんですか?」
「ああ、俺は後でとびっきりのご馳走、食べるから良いんスよ。」
「そ、そうなんですか?」

何だろう、とびきりのご馳走って。引っ掛かったけれど、それ以上聞いてはいけない気がして、私はまた口に食事を運んだ。ラギー先輩はずっとこちらを見ていた。口が乾いて食事どころではないけれど、せっかく作ってくれたのだから残すなんて失礼だ。手を震わせながら食事をするなんて初めてだった。

「……ご、ご馳走様、でした。」
「はい。美味しかったっスか?」
「お、おいしかった、です。」
「そっかぁ、良かったッス。」

途端にラギー先輩がガタリ、と席を立つ。お皿かな、と思って、私もお皿を持って台所のシンクまでお皿を運べば、急にラギー先輩がグイッと私の腕を引いてきた。咄嗟のことで体勢が取れず、尻もちをついた。驚いてラギー先輩を見れば、彼は口を三日月型に歪めて笑っていた。ズリ、と無意識に後退りすると、彼はそれを阻止するかのように私の上にのしかかる。

「なまえちゃん。俺もうお腹ペコペコッス。ねぇ、ごはん、食べてもいい?」
「え、あの、は、はい、」
「良いんだぁー、へぇー。やっぱなまえちゃんってとびきり優しくて、…甘いッスね。」

彼は喉元に向かって大きく口を開いた。ギラリ、鋭い牙が見える。食べるって何を?突然何を言い出したんだと思ったけれど、もしかして私のことを食べて良いかって?驚いて先輩の体を押そうとしたけれど、いつのまにか腕はガッチリ拘束されていて、私の抵抗はラギー先輩がガブリと喉元を噛みついた時に消え失せてしまった。

「いッ?!」
「んむ、」
「ひ、や、やだ、やめて、ッ、」
「あ、血出た。勿体な、」

ジュル、とラギー先輩が私の血をすすった。私の体は恐怖で固まってしまって、全く動かない。私、このままラギー先輩に食べられてしまうの?そう思ったら自然と涙がこぼれ落ちる。嗚咽を漏らした私の顔を、ラギー先輩は見つめた。

「ん、ねぇ、エースくんと何してたんスか?」
「ぅ、え?」
「俺に言えないこと?最初電話で勉強って言ってたけど違うんじゃないッスか?」
「あ、ご、ごめ、んな、さい。」
「何謝ってんの?俺は何してたのか聞いてるんスけど。」
「ち、ちが、ただ、いつもみたいに、あそ、んでて、」
「ふーん、俺に嘘ついてまで遊びたかったんスか?」
「そ、そういうことじゃ、」

ラギー先輩は首から顔を離したかと思ったら、今度は私の涙をベロ、と舐めた。突然のことでまた固まると、今度は恐怖で涙が止まらない私の目元をじっくりと舐め始めた。

「ちゅる、はぁ、なまえちゃんが他の男と会ってその目で見つめていたなんて、嫌っスねー。」
「せ、先輩、ごめんな、さい、あの、」
「ねぇ、そんな目、いる?」

ラギー先輩は私の目元を指でぐっと押した。ポロリ、溜まっていた涙がまたこぼれ落ちる。ラギー先輩は一切笑っていなかった。目は肉食獣が獲物を狙っている時のように、瞳孔が開いている。

「俺に嘘つくこの喉も、いるッスか?」

今度は喉元に指が食い込んだ。首を締められている、というほどの強さではなかったが、少し圧迫感があり、息苦しさを感じる。先輩に全てを握られている感覚がした。

「ゆ、ゆるして、」
「は?」
「許して、くだ、さい。」
「んー、どうしましょうかねー。」

ラギー先輩は、片方の手を自身の顎に乗せ、何かを考えていた。その間も私の首はもう片方の片方の手でガッチリと掴まれている。たまに喉をすりすり、とされるのが怖くて、私は無意識にラギー先輩に縋り付くような格好になっていた。

「じゃあ、約束しましょ?放課後は、毎日俺の部屋に来てくださいッス。流石にずっと一緒とかだと転寮とかでゴチャゴチャするからそれはできないッスけど……。なまえちゃんは、俺の側にいてくれるだけで良いっスから。後はーそうッスねー、未だに連絡してる男と連絡断ちましょっか!今までなまえちゃんこの世界で友達少ないからなーって思って、我慢してあげてたんスけど、別にもう良いッスよね?だってずっと俺が一緒にいるし。あ、バレてないと思ってたッスか?知ってたッスよ。」

ラギー先輩が発した言葉が理解出来ず、未だに固まったままの私に、ラギー先輩はまた喉元をスリ、と撫ぜる。先程恐怖を思い出し、声を発することができなかった。

「あれ?無視?今ここで返事したら、エースくんとかデュースくんと一緒にいるのは許してあげるッスよ。それとも、もうエースくんもデュースくんもいいんスか?」
「ッ、ら、ラギー、せんぱ、い」
「はい。」
「わ、わかり、ました。約束、します。」
「きーまり!なまえちゃん偉いッスね〜!いい子いい子〜!」

ラギー先輩は私の首から手を離し、私をギュッと抱きしめて、そのまま頭を撫でた。いつもされていることなのに、心臓がバクバクして全く落ち着いてくれない。ラギー先輩は、ふと私の頭を撫でていた手を止め、片方の手で私の腕を掴んだ。彼は、私の小指を彼の口元に持っていく。

「約束破ったら、なまえちゃんの小指、食いちぎるッスよ。」

そのまま、私の小指にキスをした。