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「#エロ」のBL小説を読む
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お上品に中指を立ててやりましょう


今日早く仕事終わったんだけど、ご飯食べに来るっすか?
オフィスから出た瞬間に見たスマートフォンに入っていたメッセージに、思わずニヤけた。すぐに行きます!と返事をして、その場でスキップする。久しぶりにニキくんのご飯を食べられる。ニキくんは幼なじみなんだけど、すごく食いしん坊で、自分でご飯を作るのも好きだった。そして私はそんなニキくんのご飯を食べるのが大好きだ。だからニキくんのことも大好きだ。昔はよくニキくんのご飯を食べに行ったけれど、最近はアイドル活動で忙しいらしく、めっきりその機会がなくなっていた。しかも最近ニキくんの家に留まっているクソ野郎がいるせいで、ニキくんも気を遣って暇でも誘ってくれない。寂しい。ていうかなんなんだよあいつは。突然現れてニキくんを奪った悪いやつ。いつもニキくんにお金借りて家でグータラしやがって。ニキくんがこうやって誘ってくれる時は、あいつが居ない日だということは分かってるから、今日は思いっきりニキくんを独り占めするんだ! 何作ってくれるんだろう、楽しみだな〜〜〜。


「なんでいるんだよこの野郎。」
「ギャハハ、なまえなんつー顔してんだよ!久しぶりじゃねーかぁ!」
「おい、天城燐音、やめろ!頭ぐしゃぐしゃするな!」

最悪だ。いないと思っていたのに今日は憎き天城燐音がニキくんの家にいた。こいつのニヤケ顔は見ているだけで苛立つので近くにあったクッションを奴の顔に向かって投げた。お、枕投げかァ?受けて立つっしょ!と私の投げた力の倍の力で顔面にぶつけられた。は?痛い。ニキくんをチラッと見たらすぐ目を逸らして天ぷらを揚げ出した。おいどういうことだ。説明しろ。

「はい、できたっすよ〜。こっちはなまえちゃんの好きな芋天!海老は高いから一人一本ずつね。」
「ニキくん。」
「おいニキ、海老天一本とか固いこと言うなよ〜。俺っちもう一本もーらい!」
「あ、燐音くん駄目って言ったじゃないっすか!も〜最悪……なまえちゃんの分は食べないでくださいよ!」
「ニキくん!」

最悪なのはこっちだ!ニキくんはすぐにこうやって天城燐音に構いだす。私のこと忘れてるんじゃないの?というくらいである。天城燐音があまりにもクズなせいではあるんだけれど、今は私が喋っているのに……!天城燐音め……!

「なまえちゃんどうしたんすか?早く食べよ、ご飯冷めちゃうっすよ?」
「ニキくん何で天城燐音がいるの?!聞いてない!」
「いやぁ……それに関しては申し訳ないとは思ってるんすけど……燐音くんがどうしてもって……。」
「なんだぁなまえ、俺っちがいると不満ってかぁ?」
「不満だよ!」

初めて会った時は、人見知りの私にも気さくに話しかけてくれるし、一緒に遊んでくれるから良いお兄ちゃんだなーって思っていたけど、ニキくんの家に行くたびにあれ?こいついつもいるな?って気付いてから、彼は私の中で邪魔者だった。たまに三人で食べるのは良いけれど、毎日のようにご飯食べに来てるとかありえない。本来なら私の役目なのそれは!

「悲しいなぁー。俺っちはなまえに会いたくて会いたくて仕方がなかったというのに……。」
「嘘だね。燐音くんは息を吸うように嘘つくって知ってるからね!」
「俺っちがニキのご飯毎日食べてるからって拗ねんなよ〜。」
「うぐっ、な、そ、そそそんなことで拗ねません〜。」
「ほら、俺っちの海老天やるよ。出汁つけて食えよ。」
「え?!良いの……?」
「なまえちゃんそれ本当は僕の分っすからね。」

ニキくんの天ぷらは最高だ。衣がサクサクしている。何回も作ってるから慣れただけっすよ、っていつも言うけれど、そうやって謙遜するところも尊敬する。好き。そして褒めれば調子に乗ってめちゃくちゃ天ぷらの数が増えていくということを私は知っている。だから作っている時に横で褒めまくる時がある。ニキくんは本当に単純だ。そういうところも大好きだ!

「うんまい……最高……。良い嫁になるよ、本当に……。」
「嫁っすか、旦那じゃなく?」
「ギャハハ、ニキが嫁ならさながら俺っちが旦那ってか、なまえ?」
「殺すぞ天城燐音。」

私が天城燐音の頭を殴ろうとしたらすんでで腕を掴まれて、そのまま両手で頬っぺたをつねられた。結構容赦なく伸ばしてくる。痛い、痛い!

「に、にひふんたふへて!」
「あ!」
「あ?ニキなんだよ。」
「しまった、牛乳切らしてたの忘れてたっす。」
「にひふん?!ひいへる?!」
「コンビニ行ってくるんで、そのまま食べててくださいね〜。」
「にひふん?!にひふん!!!」

何ということだ。幼なじみがこんな理不尽な目に遭っているのに平気で置いていきやがった。たかが牛乳ごときで。ニキくんの食への執着は恐ろしい……。まじで私のことが見えていないようだった。天城燐音は未だに私の頬っぺたをニギニギして堪能している。……最近肉付いてきたからちょっと恥ずかしい。握れるところが多くてすみません本当に。ていうかなんで無言なの?こいつ。怖い。背が大きいから迫力も普通の人よりあるし。

「……なぁなまえちゃーん?」

……こ、これはやつが悪いこと思いついた時の顔だ……。

「俺っち、今日誕生日なんだけどさぁ〜?」
「え、きょ、きょう?」
「そ。やっぱ知らんかった?」

知ってるわけがあるか。さっきまでの私の態度を思い出せ天城燐音。そもそもお前は私とニキくんの間に入ってきた邪魔者なのだ。私とニキくんは長年の、美しい幼なじみという固い絆で結ばれているのだ! それなのに、私を差し置き毎日ニキくんと過ごしやがって……う、羨ましい。ともかく、そんな憎き存在の誕生日を知っているわけがないだろう。……そもそも知り合って間もないわけだし……。何で私がこんな言い訳を脳内でせねばならないのだ。

「ひ、ひらなひゃった。」
「えぇー。俺っち超ショックなんですけどー。……ってことはプレゼントもなし?」
「そもそも来てるなんて知らないよ!」
「何も持ってないわけ?何でもいいから欲しいなぁー。」

は?本人からプレゼント要求されるとか意味わからんのやが。でもここは何か適当にあげないと頬を解放されそうにない。本当に面倒なやつだなこいつ……。私今日何持ってたっけ?カバン……仕事道具……ペン……ケータイ……おやつ……手帳……手帳の中の……はっ。

「ニキくんの幼少期の写真ならあげないよ?!」
「は?」
「手帳の中の、ニキくんの写真が欲しいんでしょ?!」
「いらねぇーよそんなもん。」
「え、じゃあまさか、お金?!そんなないよ?!ていうかお前ニキくんのお金でパチンコすってんの知ってんだからな!!!」
「はー……ロマンがないねぇなまえちゃんは……。」

天城燐音は私の頬っぺたをふたたびふにふに触ったかと思ったらだんだんと顔が近づいてきた。
え?近すぎない?
混乱している内に天城燐音の唇が私のそれに触れた。
え?
天城燐音の唇が私のそれに触れた?????

「?!」
「これが誕プレってことにしてやるよ。」
「ただいまぁー!牛乳のついでにアイス買ってきたからみんなで食べるっすよー!」

速攻でニキくんの背中へ張り付く。ふ、震えと汗が止まんない。ニキくんが不思議そうに私を見た。ニキくんはやっぱり落ち着く……。あ、なんか良い匂いふる……。はっ、というかなんてことするんだあいつ、信じられない。

「なまえちゃんそんなタコみたいな顔してどうしたんすか?」
「た、タコ?!」
「あー!燐音くんまた何かしたんすかー?」
「何もしてないっしょ別に、なぁ?」
「う、嘘だ!チューしたじゃん!」
「……チュー?」
「おいおい、そんなでけぇ声出すんじゃねぇよなまえ。」
「燐音くんが?なまえちゃんに?」
「そ、そうだよ……。」
「殺すぞ」

に、ニキくん?