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なにかがおかしい!


目がさめると全く知らない天井だった。
え、何それ、どういうことだ。おかしい、昨日の記憶がぼんやりとしていて思い出せない。確か昨日は何をしていただろうか。誰かと遊んだはずだ。思い出せ、思い出せ私。そうだ、確かお昼はケーキ屋さんに行った。それから盛り上がって良い感じの居酒屋さんで飲んだ。誰と? そうだ確か

「羽風先輩だ……。」

ああ、さっきから嫌な予感が止まらない。昨日は確か羽風先輩と久しぶりに会った。二人ともお互いの進路に進み、社会人になって少ししたところだった。羽風先輩は普通にそのままアイドルとしての道を進み、今ではもうそれはそれは人気アイドルになっていた。一方私は普通に就職し、何事もなく暮らしていた。そんな時に暇ができそうだから遊んでよ、と羽風先輩からお誘いを受けた。二人で遊ぶと、彼に迷惑が掛かるかもしれないと思って断ろうとしたけれど、車で移動するから! お願いします! と何度もしつこかったため受けることにした。久しぶりに先輩に会うと、やはり女の子慣れしてるのか、話すのが楽で、たくさん話し込んだ。しかし、何度思い出しても思い出すのは羽風先輩と飲んでいた所までである。何故。ま、まさかやらかしたのか……? と不安になって被っていた布団のシーツをおそるおそる覗くと、服はしっかり着用していた。昨日の服のままである。脱いだような痕跡もない。ひとまず安心したけれど、何故こんな状況になっているのか。酔っ払って全く知らない人の家にまで押しかけたとか? あり得る。ひとまず状況を把握する必要がある。今何時で、どこにいるのか確認するために携帯を探したが、携帯どころか昨日私が持っていた荷物も見当たらなかった。まさかどこかに落としたのか? 駄目だ、考えることが多すぎる。

すると、不意に向こうにあったドアからガチャリ、と音がした。やはりここは誰かの家だったのか、と思ってそちらを見ると、そこには見覚えのある人物が立っていた。

「あ! なまえちゃん、おはよう。 」
「羽風先輩。」

先輩は私を見つけるなり嬉しそうな顔をして、こちらまで寄ってきた。腕にビニール袋を提げており、ベッドの横にあったサイドテーブルにそれを置いた。先輩は私の姿を見ても驚かなかった。ということは、おそらく先輩がここに連れてきたのだろう。昨夜の記憶がない上、衣服も乱れている痕跡がないということは、私が勝手に着いて来て勝手に眠り込んでしまったのだろうか。完全に迷惑かけているじゃないか、どうしよう。

「せ、先輩。」
「ん〜? 」
「私、昨夜の、記憶がなくて、ですね。も、もしかして迷惑かけたのではないかと思いまして……。」
「迷惑? そんなことないよ、このまま帰すのが心配になるくらい酔っ払ってたけどね。」

あはは、と苦笑する先輩に、申し訳ない気持ちが込み上げる。もしこれでスキャンダルとかになって迷惑かけたらどうするつもりなんだ。小さく先輩に、すみません、と溢す。これからはお酒を控えようと強く決意しながら、ベッドから降りようとした時だった。

ガチャリ

そう音が鳴ったと思えば、私の足が動かないことに気がついた。おかしいな、と思って何度か動こうと思えば、また何かに遮られる。何となく、何なのかが分かったけれど、かなり混乱して、ひたすら足を動かしたが、ガチャガチャと音が鳴るだけであった。羽風先輩がこちらを見て微笑んでいる気がするが、私はとても先輩を見ることができなかった。おそるおそる、シーツが被さっている足元を覗く。

「これ……。先輩、これは一体……。」

見ると、そこには何とジャラジャラとした鎖が付いていた。笑えない。いやいやいや、どういう状況だこれ。

「……ごめんね。」
「いや、ごめんじゃなくて、何故こんなものが付いてるんですか! 」
「だ、だってなまえちゃんとずっと一緒にいたいと思ったんだもん。最近外で遊ぼうってなるとスキャンダルとかになっちゃうからなかなか会えないから寂しくて、つい……。
「いや、つい……で済まされる話じゃないですよね?! いや、いいじゃないですか別に家でも! 中で遊んだら良いじゃないですか! 」
「こ、恋人でもないのに家で遊ぶって……なまえちゃんたら大胆……! でもあんまり家出入りしても写真撮られちゃうかもしれないし……。 」
「あー! そうじゃなくてですね! 」

何だ、さっきから話を聞いているようでまるで聞く気がない。むしろ噛み合わなすぎて苛立つばかりだ。ここは冷静にいかなければならない。どうも先輩は女の子と遊ぶことが出来ずに気がおかしくなっているらしい。だからって私を巻き込むな。

「そもそも女の子から手を切ったはずでしょう……。息抜きも大切なことは分かりますけど、何もこんなことしなくても……。外してくださいこれ。」
「うん、そうだよ。こんな必死になるのなまえちゃんだけ。」

そう言ってメソメソして言った先輩の言葉に固まる。は? 今何て言ったこの人。

「なまえちゃん、好き、好きなの。どうしたら良いかよく分かんなくなって、ごめんね、嫌いにならないで。」

先輩は私を抱き寄せて泣き始めた。勘弁してくれ。泣きたいのはこっちだ。こんな色んな意味で重たい鎖を付けられてるんだ。というか羽風先輩私のこと好きだったのか?

「ちょ、先輩。泣くのはやめてください。そしてこれを外してください。」
「うう……。嫌だ、なまえちゃん絶対引いてる、俺のこと嫌いになってる。」

そりゃあね! という言葉を飲み込み、どうすべきか考える。とりあえずこの鎖を外してもらえると冷静に話をすることができるだろう。私だって不測の事態に焦っているんだ。

「わ、私は、先輩のこと、好きですよ。」
「……え? 」
「いつも優しいですし、意外と自分に厳しいところとか、尊敬します。」
「ほ、本当? 」
「はい、だから、離れるなんてことないですから。ちゃんと人目を気にしながらこれから会いましょう。もしスキャンダルになったら、ちゃんと責任とりますから。だから、鎖なんて必要ありませんよ。」

あああ何てことを口走ってるんだ私、と汗をダラダラ垂れ流す。どうやら私は思った以上にこの状況に焦っていたらしい。先輩はしばらく放心していたかと思えばスッと立ち上がり、鍵を取り出して私の足についていた枷を外した。うわぁ、急にすっきりし

「なまえちゃんごめんね、ごめんね! 」
「うぐっ」
「俺も、この責任は取るから! もうこんなことしない! ごめんね! 」

また羽風先輩が抱きついてきて泣き出した。勘弁してくれ。まぁでもこれに懲りたなら良いだろう。結果的に何か付き合う流れになってる気がするけれど。まじか。

「でも嬉しい。なまえちゃんが好きって言ってくれた。」
「はははー。」
「……もし次離れたらもう絶対離してやんないけどね。」

羽風先輩が何か呟いたけど、アレーキコエナカッタナー。