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恋じゃなゐ



「北斗ー! 私好きな人できた!」

そう元気よく言ったのは俺の幼馴染だ。数少ない癒しの時間である金平糖を食べる時間が一気に削がれた気分だ。あ、金平糖一個もーらいと金平糖を取ろうとする手を跳ね除けると、なまえがこちらをキッと睨んできた。

「何すんのよ! 私にも金平糖食べさせてよ、どケチ! てか何よ今時金平糖って! ジジ臭いよ北斗! 」
「急に来たかと思えばまたその報告かなまえ。金平糖は残り数が少ないからお前にはやらん。ジジ臭いっていうな。」

俺の幼馴染であるなまえは恋多き女だ。昔から恋をするたびに俺にこうやって報告してくる。別に報告しなくてもいいだろう、正直どうでもいい。そして失恋するのも早い。毎回思うが、こいつはどうもグイグイしすぎるらしく、相手をドン引きさせてしまうらしい。頼んでもないのにお弁当を作って食べて!と言っているのを見たときは正直俺も引いてしまったのは記憶に新しい。

「……で、今回はどんな人なんだ? 同じクラスの奴か? それとも先輩か? 」
「ううん、北斗の友達の明星スバルって子!」
「…………すまん。よく聞こえなかった。もう一回言ってくれ。」
「もー耳もおじいちゃんみたいなんだね。北斗の友達の明星スバルって子だって! 」

どうやら空耳でないようだ。数日前に俺の家に来ていた時に俺の部屋になまえが入ってきた際に会い、その場で仲良くなって、俺の知らない間に連絡先も交換して、毎日やり取りをしているらしい。明星くんってめっちゃ優しいし、その上イケメンだから悪いところない!と頬を染めているなまえを見ていたらゲンナリしてきた。これは面倒臭いことになりそうだ。


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A組の教室は今日も賑やかだった。相変わらず明星と遊木が騒いでいる。正直うるさい。しかし、俺はそれどころではなかった。明星に馬鹿な幼馴染に付き合わせていることを謝罪せねば、何故かそのような使命感に駆られていた。

「……ホッケ〜さ、さっきからこっち見すぎだよ!何?! 俺のこと好きなの?! 」
「えぇ?! し、知らなかった! ごめん氷鷹くん! 僕全然気が回らなくて! 」

こいつらのアホみたいな言動を見ていたら無性に苛立つ。つくづくなまえは男選びのセンスが悪い。

「明星。なまえと連絡を取っているそうだな。」
「ん? ああ、なまえちゃん? うん取ってるよ! 」
「……すまんな、なまえは馬鹿だから面倒臭いこともあるだろう。俺から詫びさせて欲しい。」
「何で謝るの〜? なまえちゃんすごく良い子だから楽しいよ、今度一緒に遊びに行くことになったし。」

……ん? こいつ今遊びに行くとか言ったか? 俺の空耳だろうか。 いや、言った。嘘だろう。

「……別に無理して付き合わなくても良いぞ。あいつと付き合っていたら馬鹿がうつるからな。」
「無理してないよ? 電話も何回かしたけどすごく良い子だし。なまえちゃんみたいな子が彼女だったら楽しいんだろうな〜って思うよ!」

何ということだ。アホ同士波長が合うのだろうか。いや、別に二人が付き合おうがどうでも良いのだが。何故かイライラしてきた。

「だ、だがなまえの愛は正直重いぞ。お前は束縛とかされるの無理だろう? 」
「ん〜? でもそんなの付き合ってみなきゃ分からなくない? ていうかホッケ〜さ。」

付き合ってみなきゃ分からないだと。こいつまさか本当に付き合う気なのか。あの馬鹿と?

「ホッケ〜話聞いてる? 」
「な、何だ! アホの癖に! アホ同士で仲良くするとアホさが増すぞ! 」
「ちょっと何混乱してるのホッケ〜…。ホッケ〜さ、何そんな焦ってんの?」

焦ってる? 俺が? 焦っているだと?

「別に焦ってなどない!!! 」
「嘘だ! そんなに声張り上げてんの初めて見たもん! 」
「ああああ焦ってなどなななない!!!! 」
「ホッケ〜大丈夫?! 」

何故か汗が止まらなくなってきた。明星に心配されるなんてこの世の終わりだ。そんな俺の様子を見て、明星はニヤニヤしながらこちらを見てきた。

「ホッケ〜さ、なまえちゃんのこと取られると思って焦ってるんでしょ。何だかんだなまえちゃん今まで彼氏できたことないらしいもんね〜。ホッケ〜てなまえちゃんのこと大好きなんだね! 」

……こいつは一体何を言っているんだ。


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「ぶられだ〜〜〜〜〜〜」

帰宅して明日の準備をしていると、泣き腫らした顔をしたなまえが俺の部屋まで入ってきた。顔がグチャグチャで正直言って見てられない。どういう事かと問えば、一緒に出掛ける前に気持ちが高ぶってしまい告白してしまったらしい。やっぱり馬鹿だこいつは。

「早すぎだろう。」
「慰めてよぉぉ〜〜うおおお〜〜」
「おい、こっちに来るな。鼻水で顔がグチャグチャだと気づけ。」
「ぼぐどぉ〜〜〜〜!!!!」

本当に俺の胸に顔を埋めた。鼻水が着いてしまった。汚すぎる。しかし幼馴染に甘すぎるのか、そのまま頭をポンと叩く。なまえが振られたときはいつもこのようにしているのだ。気が済めばこいつはいつもケロッとするから、こうすればすぐに回復する。

「……にしても今回は俺も話を聞いてれば付き合えそうだと思っていたんだがな。お前は何事も急ぎすぎだろう。」
「それがさ、明星くんは私のこと良いなって思ってくれたみたいなんだけどさ……。」

やっぱりそうだったのか。あいつ付き合う付き合わないとか言っていたからな。

「……何か私はもっと周りのことを見た方が良いんだって。私のことすっごい好きな人が私の近くにいるらしくて、スバルくんはその人に勝てないんだって。」
「……………。」
「誰って言っても教えてくれなくてさー。これって告白を断るためのうまい言い訳なのかな? 私誤魔化されたのかな? ねぇ北斗はどう思う? 」

なまえが純粋な目でこちらを見てくる。明星の言葉と相まって無性に腹が立ってきた。何なんだ、こいつらは。揃いも揃ってアホしかいない。


「知らん! 」


でも今更気づくなんて俺も馬鹿なんだろう。