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この気持ちの名は



ずっと前から隣の席の神崎くんと目があう気がする。私が神崎くんの方を見るといつも、神崎くんがこちらを見ているからである。目があうとすぐに神崎くんは逸らして、黒板の方を向くので、私もすぐに逸らす。そういうことが続いていた。

おかげで神崎くんが最近気になって仕方がない。


今日は非常に天気が良く、気候も暖かかった。こんな時には外でお弁当でも食べたいなぁとぼんやりと中庭まで出てくると、そこにはなんと神崎くんがいた。神崎、くんと私が緊張しながら声をかければ、おお、なまえ殿! とパッと顔を明るくさせた。その笑顔を見て、変な気分になった。
ここでご飯を食べるのであるな、うんそうだよ、では我も一緒に食べて良いか、…うん大丈夫だよ。そう軽くやり取りをして、私たちは昼食を共にした。神崎くんの料理は自分の手作りらしく、今日の卵焼きは良くできたからなまえ殿にも食べて欲しい、と私に一つくれた。ふわふわですごく美味しかったが、私は何故か食事に集中することができなかった。神崎くんがこちらを見て微笑んでいるからだろう。体が熱い。

放課後になって、プロデュースをするために噴水を通り抜けようとした時、何やら噴水前が騒がしかった。何だろうと思って見ると、深海先輩、羽風先輩、そして神崎くんがいた。どうやらまた深海先輩は噴水で水浴びをしていたらしい。呆れ気味な羽風先輩と、深海先輩に手を引っ張られそうな神崎くんの様子に、今日も元気だなぁと思った時、深海先輩は私がいるのを見つけて、私の腕を引っ張ってきた。え。

「?! なまえちゃん?! 」
「なまえ殿?! 」

二人の焦るような声に、どうやら私は深海先輩に噴水に引き込まれたことを知った。全身グシャグシャだ。俺バスタオル貰ってくるよ、と羽風先輩がパタパタと駆け出し、神崎くんは私の方をじっと見つめていた。

「……風邪を引くといけない。なまえ殿、一旦これで髪を乾かして欲しい。」

そう言って神崎くんは私の髪の毛を小さめのスポーツタオルでガシガシと拭いた。ありがとう、神崎くん。そう言ったら神崎くんは困ったような笑みを浮かべた。美しい笑みだった。


この日のレッスンはKnightsのレッスンだった。もうすぐ本番が近いということで、夜遅くまでのレッスンだったため、鳴上くんとどこかで食べて帰ろうという話になり、近くのハンバーガーショップへ寄った。

「そういえばなまえちゃんは最近どうなの? 」
「どう? どうって何が? 」
「んもう、最近気になる子とかいないの、ってことよ! 」

そう鳴上くんに言われてすぐにパッと神崎くんの顔が思い浮かぶ。ちょっと悩んで、私は最近あったことを鳴上くんに話すことにした。

「気になるっていうか、最近神崎くん見ると変な気分になるんだよね。汗とか出てくるし、一緒にご飯食べても喉に上手く通らなくなるし。それで、最近よく目が合う、ような気がして」

私がここまで言うと、鳴上くんはふふっと笑った。何で笑ってるのか気になったので、どうしたの、と問うと、鳴上くんはまだ少し笑いながら言った。

「うふふ、ごめんなさい。あんまりにも可愛らしくて。」
「今の話そんなにおかしかったかなぁ。」
「ああ、違うのよ。目がよく合うって言うけど、それってね、なまえちゃんが颯馬ちゃんのことを見ているからだと思うのよね。」

鳴上くんの言っていることがよく分からない。思わず顔をしかめてしまった私を見て微笑む鳴上くんは、

「そのうちどういうことか分かるわよ。」

そう言って答えを教えてくれなかった。


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最近よくなまえ殿と目が合うような気がする。我がなまえ殿を見たときに、彼女が必ずこちらを見ているからである。気のせいか、そう思っていつもすぐ黒板の方を向くのであるが。

お昼休みに入り、天気も良いということで中庭で昼食をとっていると、なまえ殿が声を掛けてきた。どうもなまえ殿も中庭でお昼休みを過ごそうと思っていたらしい。せっかくだから一緒に食べても良いかと尋ねると、どうも微妙な顔をされた。嫌なのだろうか、と心配になったが、うん大丈夫だよ、と言ってくれたので、昼食を共にした。自分で作った卵焼きをなまえ殿に差し上げると、すごく美味しいと微笑んでくれて、あげて良かったと心の底から思った。

放課後になり、海洋生物部の活動があるとのことで、噴水で集まっていた。部長殿はいつもの通り、噴水の中で水浴びをしていて、我の腕を引っ張ろうとしているところであった。いつもと違うのはそこになまえ殿が来たことであった。部長殿はなまえ殿の姿を見ると嬉しそうに彼女の腕を引っ張ってしまい、なまえ殿が水でビショビショに濡れてしまった。風邪を引いてはいけないからと、あの助平がバスタオルを取りに行ったが、このまま放っておくのも心配だったので、自分の持っていたたおるでなまえ殿の髪の毛を拭いた。女性の髪に触るなど失礼かもしれないが、その時は少し冷えていたので心配だった。
ありがとう、神崎くんと笑うなまえ殿の笑顔を見て、感じたことのない胸の取っ掛かりのようなものを感じた。

最近なまえ殿と目が合うたびに起こるこの気持ちがよく分からない。一体これは何なのだろうか。