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愛妻家の食卓



ここの所外食へ行くたびに体調が悪くなる。それどころか、所定の夕食の時間より遅くなると同じように体調が悪くなる。だからと言って病院に行っても、特に悪い所もないので、どうしたんだろうと自分の体の中の異変に危機感を抱いていた。

「……ただいま。」
「おかえりなまえ。どうした、顔色悪いぞ。」
「うん、何かまたちょっと体調が悪くなったみたいで……。ん? 何か良い匂いする。今日何作ったの? 」
「おお、今日はシチュー作ったんだよ。だいぶ冷え込んできたからな。」

こうやっていつもご飯を作って迎えてくれる旦那、紅郎さんには感謝しかない。彼にだって仕事はあるのに、いつも私のためにと料理を振舞ってくれ、食卓はいつだって明るい。それに、

「どうする? 飯食ってから寝るか? 」
「うん。紅郎さんのご飯食べると落ち着くからね。」

いつだってそうなのだが、彼のご飯を食べると、このように体調が悪い日でも元気になる。かつては私も忙しい日はコンビニや外食などで済ましてきたのだが、やっぱり手作りには敵わないのだなぁと実感するばかりだ。

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今日は久しぶりに仕事で休みが取れたが、紅郎さんは仕事があるということで、私も久々に料理でも作るか、と思い立ったものの、何を作ろうか全く思いつかなかった。それに加え、借りていた本の返却日がギリギリだったのを思い出して、ついでだしレシピ本でも見ていくか、と近くの図書館に行くことにした。

私が借りていた本が歴史系の本だったためか、司書さんが新しい本がいっぱい入ったのでよろしかったら見てくださいね、とニッコリとした笑顔で教えてくれた。そう言われると気になり、そのコーナーへ行く。色々な本があって、とても興味がそそられるが、ある一冊の本が目に止まり、取り出してページをめくった。「中世の男と女」というタイトルで、その時代の男女の在り方を題材にしたものらしい。パラパラと捲っていると、あるページに目が行った。浮気防止法という大きな見出しに、昔の人のやり方ってすごそうだなぁとぼんやりと思った。

朝、妻は夫の朝食に遅行性の毒を盛り、夕食に解毒剤を盛るそうだ。そうすることで、夫は家に帰ると落ち着く、という錯覚を抱くそうで、外出が減るようになり、浮気がなくなるのだそうだ。
実際は、落ち着くということではなく、もし夕食を食べなかったら、解毒剤を飲んでないので、体に毒が回って体調不良になっているだけだという。

こんなことをしてまで浮気を防止したいのか、私には分からないな、と考えていたら、もう夕方になっていた。そうだ、ご飯作らなきゃなぁ。


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「あれ、紅郎さん。帰ってたの。おかえり。」
「おう、ただいま。その様子だと図書館行ってたみてえだな。何だこれ、レシピ本か? 」

司書さんからもらった紙袋の中に入っている本を紅郎さんは不思議そうに見ていた。帰ってきたら良い匂いがしていたので、もう既に紅郎さんが夕食の準備をしていたようだ。結局私が作らなくて良くなってしまった。

「今日は私が休みだから作ったのに。だからレシピ本読んでどれにしようかな〜って決めようとしてたんだ。」
「そうか。俺も今日は仕事早く終わる日だったからな。今日は唐揚げだぞ。」

こう言っても交代してくれないだろう。そう思って私はお箸やお皿を並べる仕事をし始めた。

「……それに朝飯は俺が作ったからな。夕飯も俺が作んなきゃだろ。」
「ん? そんな制度だったっけ、うち。」

私のその疑問の言葉は紅郎さんのできたぞ、という言葉で遮られてしまった。まあ良いか。相変わらず彼のご飯は美味しそうだ。