03

沖田惣次郎side



「そこの少年」

澄んだ声音に、僕は反射的に振り返った。
そこにいたのは、銀髪が輝く、見たことのないくらいに美しい女性で。

「試衛館ってどこかわかるかな」

言って、首をかしげてほほ笑んだ。



「月神殿、よくおいでになった」

近藤さんは、月神さん? と呼ばれた女性を喜々として迎え入れた。

話を聞くと、どうやらものすごく強い人らしい。なんだか幕臣にも交流があるとか、メリケン帰りだとか、あの鞘に桜の螺鈿が施された刀は鬼にもらったんだとか、噂の絶えない人なんだって。

なんでかその人は江戸に数ある道場の中で、試衛館に一番興味を持ってる。
あの警戒心が強い土方さんもすっかりほだされちゃってて気に入らない。
そんなに強い人なら僕と試合してくれないかな。真剣で。



「私は月神香耶。君の名前は?」

「………沖田惣次郎」

「そうか、近藤さんたちが言ってた『惣次』とは君のことか」


この人は僕の試合の申し出に、意外にあっさり了承してくれた。
真剣でするの? じゃあ近藤さんには内緒なんだろうね。なんて言って笑ってた。
その余裕ぶってる綺麗な顔を歪ませたらどうなるんだろう。


見てみたい。
このひとの、いろんな顔を。


僕より頭ひとつ大きな彼女を、そっと見上げて僕はほくそ笑んだ。
僕もすでにこのひとにすっかりほだされちゃってたことに、まだ僕自身、気付いていなかった。

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