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沖田総司side



僕達は、風間の屋敷の周囲を徹底的に捜索した。
消えた南雲薫と香耶さんの姿をさがして。

しかし、空が赤く染まり、日没が近づいても、目的の人物を見つけることができなかった。


「くっそ、市中から離れられちゃあもうお手上げだぜ」

「そんな……」

「もう少し捜索範囲を広げてみるべきかもしれません」

「……ああ」

うなずきながらも土方さんは二条城のある方角に視線をやる。

「だがいつまでも勝手な行動をとってるわけにはいかねえ…」

そう、二条城では、近藤さんたちがまだ将軍警護の任についてる。
せめて今夜中には戻らないと、あちらにも迷惑をかけることになるだろう。

近藤さんだって、それに、香耶さんだって、そんなことは望まないはず。

「………」

……でも、薫に連れ去られるのなんか言うまでも無いけれど、風間に先を越されるのもまずいんだ。


心身共に疲労と焦りだけがつのっていく。
僕は汗のにじんだ手を、硬く握り締めた。


そこに。

「副長、屯所警備の隊士から伝令です」

渋い表情をした山崎君がやって来て、言った。

「……月神君が屯所に帰ってきているそうですが」

「「「はっ?」」」


は?
香耶さんが、帰って……って、

え…えええ!!?



そんな報告に、みんな暫し動くことができなくなったのだった。



僕達は慌てて屯所に帰還することになった。
僕は、みんなを置いて一足先に、草履を脱ぎ捨て香耶さんの部屋に直行する。
刀の柄に手をかけながら、香耶さんの部屋のふすまを蹴破る勢いで開け放った!

「香耶っ…」

僕は部屋に足を踏み入れ…

「……さん」

「あ、総司君」

僕はへたりと床に膝をついた。
件の渦中の彼女は、一人で、部屋で寝巻きを着替えているところだった。

どうやらお湯で身体を拭いていたらしい。桶や手ぬぐいが部屋の隅に置いてある。
むき出しの白いうなじや、華奢で綺麗な背中に、僕は目を奪われてしまった。
彼女は僕の視線に気づいて慌てた様子で身体を隠す。

「総司!」

「総司、香耶はいたかー!?」

横手からどたばたとみんなの足音が聞こえて、僕は我に返った。
そして勢いをつけてふすまを閉て込めた。

「どうした。総司」

一君が、閉め切られたふすまに目線をやるが、

「誰もこの部屋に入るな! 入ったら殺す!!」

僕はみんなに向かって鯉口を切りながら、
動転してそう叫んだのだった。




「はぁ、散々手間かけさせやがって。洗いざらい吐いてもらうぞ、香耶」

「心配かけたことは謝るけど……その言い方、なんだか私が悪人みたいじゃないか」

とりあえず香耶さんには服を着てもらって、広間に集まり報告会議。
悪びれなく笑う彼女は、不機嫌そうに眉間にしわを寄せる土方さんとは対照的だ。

「おまえ、どこに連れて行かれてたんだよ。俺ら、ずっと探してたんだぜ」

「ごめんね平助君、みんなも。私は目が覚めたら自室にいたよ。薫君は最初から、私の意に沿わないことはするつもり無かったんだと思う」

香耶さんのせりふにみんな深くため息をついた。

「……今回、風間千景も、南雲薫も、香耶への執着だけで動いていたという印象だったが」

「わかったことは、あいつらが最初から香耶の知り合いだったっつーことと、」

「それから、奴らが鬼っていう種族であること。そして、同じ鬼とはいえ、奴らも一枚岩とは限らないってことかな」

いろんな意味で、厄介な敵が増えた、ということだよね。

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