二
僕がここに来て一番最初に受けた命令は、食事に関することだった。
「松本さんの話じゃ、君は食が細くて大酒のみだそうだね。
そんなもん病気になるに決まってるわ!」
どん、と布団の上に置かれたのは、少ない粥の入った椀。
「………これは?」
「これは鶏がらでとった出汁で作った卵雑炊。ねぎ抜き」
「へぇ」
卵って高級品じゃなかったっけ。
「君には今日から私の指示に従ってもらうからね。まずは一日三食出されたものを全部食べること」
「三食?」
「ああ、この世界じゃ一日二食なんだったか。でもこの家じゃあ私が法律です。治りたかったら文句言わず食え」
ずいぶん横暴だなぁ。それに、
「『この世界』ね……わかったからそんなに殺気立つのやめてくれないかな」
「殺気なんて出してませんー」
「あれ、食べさせてくれるんじゃないの?」
「阿呆。私もここで一緒に食うんだよ。甘えんな」
なるほど。
「……誰かと食事するなんて久しぶりだな」
ぽつりと呟いた僕の言葉に、香耶さんはぴくりと反応した。
「私もだ」
そう言って、困ったように微笑む顔が、とても綺麗だった。
君が困ったように笑うから
僕は、
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