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土方歳三side



「すげえ、なんだこりゃ!」

不知火が感嘆の声をあげる。



「ごほっごっほ!」

「……なんなんだ今のは」

俺と風間の周りには、白い粉がそこらじゅうに舞っていた。

「風間、刀折れてるぞ」

「何?……貴様、これがもし家宝の刀だったらどうしてくれるんだ」

「俺が知るかよ」

「ごめんごめん、私のせいだ。君たちが刀を合わせる瞬間に、これ撒いたんだ」

袋を片手に笑いながら口をはさむ香耶。
聞けばどうやらこの粉は小麦粉だったらしい。小麦粉が何で爆発すんだよ。

「君たちを止めようと思ったんだけど手が塞がっていてね。それで手元にあったメリケン粉を投げたのさ」

だったら荷物置けよ。

「刀を合わせた瞬間に火花が散ったんだろうね。それで一瞬で粉塵爆発、ってわけ。危険ですので絶対に真似しないでください」

「なにが真似しないでくださいだ! てめえこそ何の真似だ!!」

「あはは」



俺たちが言い合っているうちに、もう一人連中の仲間で赤毛のやつが、気配も無く俺たちのそばに現れた。

「風間、不知火、ここで何をしているのです。そろそろ例の会合に向かわなければ」

「俺もかよ!? あーあ、とっとと帰ればよかったぜ」

「天霧か…ちっ仕方ない」

風間は嘆息をもらして折れた刀を鞘に納める。そして鋭い眼光をこちらに向けた。

「香耶、次は必ずお前を連れて行く。それまで待っているがいい」

「うん、また会おーね。ついてくかどうかは別として」

風間は勝手なことを言い捨てて、通りに消えていった。
おい、黒い羽織が粉まみれだったがあのままでいいのか。



そして俺たちふたりだけになった。
ちょうど人通りも途切れて、あたりは静寂に包まれる。
風間らの気配が消えるまで見送って、香耶は俺に振り向いた。

「結果はどうあれ助けてもらったんだよね。歳三君、一応ありがとう」

一応て……確かに結局ことを全部収めたのは、香耶とあの天霧って野郎だが。

「……で、なんなんだあいつらは」

「千景君は…知ってるよね。知り合いだったんだよ。天霧君と不知火君は京に来てからの仲だね」

敵と親しくしてんじゃねえよ。
……なんてこいつに言っても無駄なんだろうな。

「…わかった、もういい。この話は後だ。それよりてめえは不知火から何を買ったんだ」

「ああこれ? ふふ、今にわかるよ」

「危険なもんじゃねえんだろうな」

「もちろん……あ、粉塵爆発の可能性のあるメリケン粉以外はね」

ああそうかよ!
とりあえず香耶の言葉を信じることにして、屯所に帰ることにした。

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