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土方歳三side



俺は香耶と不知火の会話を、そばの路地裏から気配を殺して聞いていた。

「天霧に伝言、聞いたぜ。ちゃんと頼まれてたやつ仕入れてきてやったぞ」

不知火は、香耶の背中を押してどこかに連れて行く。
香耶も嬉々として奴に付いて行った。警戒心が無さすぎるぞ。

「わざわざありがとう。あれさえあれば……ふふ」

なんなんだよ。あれって。笑い方がなんか企んでる山南さんみてえに不気味だな。
とにかく香耶の尾行は続行だ。



ふたりは宿屋が並んでいる界隈に来た。
不知火は香耶を待たせどこかに行ってしまったが、ほどなくして戻ってきた。

なにか荷物を持って。



「ほらよ」

「中を確かめさせてもらうよ」

香耶は、不知火から渡された紙袋の中をごそごそと改めて、そして、

「うん、よし。確かに。大変だったでしょう? ありがとう」

「いいってことよ。取引だからな」

かわりに不知火に黄金の粒をじゃらじゃらとくれてやった。
あの黄金は…この前の四条大橋のやつじゃねえか?

とにかく、ふたりは重要機密をかわすなどということもなく、何かを売買して別れるだけのようだ。


しかし。

「不知火、こんなところで何をしている。わが嫁に手を出しているのではないだろうな」

高圧的な声が街道に響いて、その場にいた全員がそちらを振り返る。



「げっ、風間」

「千景君」

そう、そこにいたのは風間千景だった。

「ちげーよ! こんな女に手なんか出すかよ!」

「不知火君、こんな女って何さ。失礼な。これでも晋作君には昔 求婚されたんだよ」

「高杉が!? 嘘だろ!!?」


ホントに失礼だな。俺だってこんな女に惚れてんだよ。


「それより千景君、君の嫁になった覚えは 私には無いんだけど」

「ふん、いずれそうなるだろう」

「何言ってるの。だって君、私とは子作りしたくないって言ったじゃないか」

「そんなことは言ってない。あれは人間でもお前ならば貰ってやっていいと言ったのだ」

「子作りってお前ら……なんつー話してんだよ」


おい、いったいどういうことだ。
まさか風間の野郎まで 香耶に……


「せっかくだ。このままお前を連れて行く」

「あっちょっと」

言って風間が香耶に手を伸ばす。香耶は追いつめられるようにじりじりと後ずさりした。



「――待ちやがれ!」

俺は我慢がならなくてとうとう奴らの前に出て行った。



「歳三くん!?」

「悪いがこいつを連れて行かせるわけにゃいかねえんだよ」

「邪魔をするか。ならば力ずくで奪い去るまで」

「あ、こら! ふたりとも、こんなところでやめなさい!」

香耶の制止を無視し、俺と風間は互いに刀を抜き放つ。俺は一気に距離を詰めた。
互いに振りかぶり、刀と刀が合わさる。
そして……!


ぼふん!!


なぜか俺たちは爆発した。

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