朝三暮四の術
※H×H ヒソカ夢



曲線のフォルムを描くガラステーブルをはさんだ斜め前のソファーで、細おもてのイケメンがトランプタワーをひたすら作っては壊して身体を震わせている。初めのころはあまりに気味が悪いのでいちいちつまみ出していたが、今ではこいつの前でも平気で仕事ができるくらいには慣れてしまった。自分の高すぎる順応性に感心を通り越して悲しくなる。
電源を落としたタブレットPCからアダプターを抜き取りどちらもバックに突っ込む私に、男は表情を輝かせて顔を上げた。

「仕事は終わりかい、香耶?」

「私の仕事はね」

次いで私が携帯をいじると、すぐさま男の携帯がメールの着信を知らせた。

「おや◆」

「君の仕事はこれからだよ。ヒソカ」

私から彼に送られたメールの内容は、マフィアから敵対マフィアに対する殲滅依頼。
私の仕事とは念使用者向けの依頼の斡旋である。中には盗みや暗殺、昼間には口にできない怪しいものまで。依頼主の身辺調査、法外な依頼料に厳しい条件。それらをクリアし選ばれた者だけが私の顧客になる資格を得る。代わりに大概の事は引き受けるのだ。
厳しい条件が求められるのは私の抱える念能力者たちにも言えることだが。

「きのう僕とデートするって言ったよね?」

「昨日の記憶を捏造するなよ嘘つきめ。仕事先へは私の炎で送る。一時間で終わらせられなかったら先に帰るから」

「30分で終わらせるよ★」

どうせ大陸単位で放り出したって一週間もすれば戻ってくるのだ。どこにいようと依頼はメールで送ると言うのに、こいつは余程私といるのがいいらしい。
所詮殺人中毒の気まぐれな男だ。私との生活もどうせすぐ飽きるだろう、と捨て鉢になって放置してから、もう半年も経ってしまった。

ヒソカはそばまできて下半身を押しつけるように私を抱きよせる。口元に微笑を乗せて、私の頬をするりと撫でる男の表情は恍惚として艶めかしい。

「だからディナーは一緒に◆」

「……私が選んだ店でなら」

もちろん金を出すのはヒソカだけど。
ちなみにこの男にセッティングさせると媚薬盛られてホテルに直行コースである。以前それでやられて翌朝半殺しにしてやったが、こいつはなぜか私に対してマゾヒズムを開花しこっちが悪夢を見ただけだった。とにかくもう二度と主導権は握らせん。



いまいち趣味が良いとはいえない奇術師スタイルのヒソカを連れ、私のワープホールの能力で移動した。移動先は私の都合を優先し暇をつぶせる繁華街。目的のマフィアのアジトまではそこから5kmほど離れている。

「じゃ、今から30分後にそこのカフェで合流ね。1秒でも遅れたらディナーはなしです」

「わかった★」

平気な顔で鬼畜なセリフを吐く私に、しかしヒソカは笑顔でうなずいて走りだした。
おそらく奴のことだからホントに30分で戻ってくるに違いない。殺人鬼モードのヒソカの背中を見送りながら、私はジャポンの有名高級寿司店を予約する。
ついでに服を返り血まみれにしてくるだろう男のためにブラブラと新しい洋服を探す私は、しっかりあの変態にほだされているのであった。


※ネタとしてブログに置こうかと思ったけど名前変換ができなくなるのでこちらで。
(2015/01/05)

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