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土方歳三side



てめえらよく聞け、前回のあらすじだ。
茶屋密偵に行かせた香耶と、幹部数名は、奇跡のような偶然にめぐり合って、今まさに探索中だった勤皇家 宍戸溜三郎をぶっとばしちまったんだ。
くそっ、宍戸の娘に接触して情報収集してた俺の苦労は何だったっつーんだよ!
とりあえず宍戸に尋問して確証を得るまでは、俺たちの作戦は引き続き実行されることになった。



快晴だった秋の空に雨雲が張り出してきた。
まずいな。今出かけている香耶も雪村も傘なんか持っていかなかったはずだ。

俺は報告書をしたためていた筆を置き、立ち上がってふすまを開けた。
宍戸を捕縛してから二日が経ち、尋問から迅速な対応で宍戸の裏も取れ、奴を匿っていた仲間や長州医の倅も検挙できた。

いろいろと問題発言なんかもあったが、結局一番役に立ったのは香耶だったと言える。
褒美に何か望む物はあるかと訊いてみたら。


「じゃあ千鶴ちゃんと着物着てお買い物に行きたい。千鶴ちゃんに欲しいものいっぱい買ってあげたい」

おまえは雪村の愛人か。


とにかく香耶は、雪村に女物の着物を自腹で買ってやって、香耶自身は隊費で用意した女装のまま、二人連れ立って京の市中にくりだすことになった。

自腹といえば、あいつが髪を染めるのに使った大量の生烏賊は、あいつが自腹を切って仕入れたらしい。
香耶の奴、意外に結構な金満家だよな。茶屋じゃあ働いたことねえって言ってたのに。



書き上げた報告書をたたんでいるところに、開け放ったすふまの向こうから総司が顔を覗かせた。

「土方さん、巡察行ってきました」

言いながら総司はいそいそと隊服を脱ぐ。


「じゃ、行ってきます」

「待て待て総司。どこ行くつもりだ?」

「香耶さんたちが心配なので」

「香耶と雪村には監察方の護衛をつけてある」

「じゃあ雨が降りそうなので傘を届けに行ってきます」

たしかにあいつら…特に香耶が雨に降られるとまずい。
その場で髪の色が落ちちまうんじゃねえのか?
しかし総司だけで行かせるのはよけい心配だ。なんかあったら暴走するのは目に見えてる。

「ちっ、仕方ねえ。わかった俺も行く。報告書を守護職に持って行かねえとなんねえからな。ついでだ。ちょっと待ってろ」

「えー」

有無を言わさず同行の意思表示をすると、総司は頬を膨らませたが口を閉ざして従った。



そうして俺らが屯所を出て半時の後、香耶と雪村の姿を四条大橋で見つけることができたのだが。
そこではなんと、以前香耶が言っていた、修羅場ってやつが繰り広げられていたのだった。

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