竹中半兵衛side



僕の身体には香耶の精神が入っていた。

「へぇ、面白いことになってるんだね」
「他人事のように言うんだね」
「まあ、私や竹中さんは別に困ることもないでしょ。私は病人らしく寝てればいいだけたし、竹中さんは私に付き添ってればいいんだからさ。
問題は……」

意味深に言葉を切った香耶の視線の先には、三成君……が中に入っている香耶の姿が。
その表情は、この世の終わりを告げられたかのように、絶望していた。

「嘘のつけない三成君が、私の振りして敬助君たちを騙せるかってとこか」

うん。無理だね。

しかしこの世の神仏に慈悲も情けもなかった。

「香耶ー?まだ起きてないの?」

この声は。
三成君が、ざっと青ざめた。

「半兵衛君、私……いや、香耶ならここにいるよ」
「香耶さま!!?」

声の主、重虎君……無双の世の竹中半兵衛を、香耶は僕の声で呼んだのだ。
慌てる三成君を待つことなく、無情にも部屋のふすまは開かれた。

「あれ、こんな早朝にみんな集まって、どうしたの?」
「それは、その……」

彼の視線を向けられる三成君(見た目香耶)は、しどろもどろで視線を泳がせた。
それを見て、重虎君は眉をひそめる。

「香耶、もしかして具合悪い? なんだか変だよ」
「変とは失礼だね。いつもこんなものだろう?」
「あ、ああ……うん」
三成君は香耶の手助けにかろうじて相づちをうつ。
……平常心だ。三成君。

しかし重虎君に疑念を抱かせるには十分だったようだ。

「……竹中さん、香耶に何かしたんでしょ」
「え、僕がかい?」
矛先の向いた香耶(見た目僕)は、きょとんと目を瞬いて。
そしてにこりと妖しく笑った。

「離れで寝ていた僕に何かできたと本当に思うのかい? 香耶の部屋は月神の皆の部屋に挟まれているのだし、そんな隙はないよ。ただ、」
「ただ?」
「ちょっとややこしい事態であることは否定できないけどね」

香耶はいっそ清々しいまでに潔かった。




「はぁ!?」

正直に事情を話せば、重虎君は目をむいて声を上げた。彼がこのように隙のある表情を見せるのは珍しいことだ。

「……まさか三人で俺をからかって遊ぼうって魂胆じゃないよね?」
「香耶ならばともかく、僕と三成君がそんなことをして何になると言うんだい?」
「私だって君にいたずらするのにこんな風に自分の身体を使ったりしないよ」
「……本当に竹中さんが香耶なんだね」

こんなやりとりで重虎君はこの有り得ない事象を信じた。
信じてほしい側からすればありがたいことだが、僕だったらこんなにあっさりと受け入れることは難しいだろう。それこそ当事者でもなければ。
そのように聞いてみれば重虎君は苦笑して、見た目三成君の僕を見た。

「それだけ俺も、色々と有り得ない体験をしてきてるんだよね」
「それで、人生経験豊富な半兵衛君は、この現象の原因と解決法をどう考える?」

そう言って彼に顔を近づける、見た目僕の香耶。その表情はあまり深刻そうなものではない。むしろ楽しんでる。

「培った人生経験は香耶のが上でしょ。……まぁ、様子を見るしか今のところする事ないよね」
「やっぱりねぇ」

そして楽観的なふたりとは対照的に、今にも倒れそうな顔色をして固まっているのは見た目香耶の三成君である。

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