沖田総司side



ブーブーと着信を知らせるバイブレーションに気づき、僕は携帯を手に取った。

「土方さん? 帰宅したばかりだっていうのになんです?」

「仕事以外にあるかよ。幹部は二時間後に新選組本部集合だ。敵のシマで香耶の目撃情報があった」

「……わかりました」



香耶さんは行方不明中だ。

新選組のボスだった彼女が行方をくらまし、土方さんがボス代理をつとめている。



「香耶さん、仕事が入っちゃった」

「え、そうなの? 大変だね…」

寝室をのぞくと、ベッドにうずくまっていた香耶さんが寝ぼけまなこで起きあがった。可愛い。



「絶対に外に出ないでね」

「……わかってるよ」

複雑な表情をする彼女に近づき、頬に軽くキスする。

「もし外で迷ってまた記憶をなくしたら、君は路頭に迷うことになる」

「うん……」

「僕のいない間に香耶さんが危ない目に遭わないか、心配だから」

「うん。ありがとう、心配してくれて」

儚く笑う香耶さんに、僕はほんの少しだけ安堵した。



これで香耶さんは、まだ僕の手元にとどまってくれる。

僕だけの、香耶さんで、いてくれる。


(2013/2/23)

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