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沖田総司side



長州の過激派浪士らが御所に討ち入ったこの事件では味方同士での情報の伝達がうまくいかず、新選組は後手に回った。
僕達は会津藩邸で指示を仰いで一日中歩き回った。挙句の果てに会津の予備兵と待機。

しかし九条河原で待機中に事態は動いた。



「守護職から伝令だ!
これより新選組は、禁門に残る長州軍を迎撃、付近に潜伏する敗残兵の掃討、敗走の長州軍を追討する」

言って土方さんは、なぜか僕にちらと視線をよこした。

「会津中将殿に新選組を推薦する者があったらしい。そいつは昔会津屋敷でお庭番をしてた奴で、会津中将殿が特別に目をかけてたんだと」

「はぁ、それがどうしたんです?」

「変わった着物を着た、小柄で銀色の髪の女だったと」

「はっ?」


それって……それって!?
僕はその場に縫い付けられたように動けなくなった。

僕の気持ちを代弁するように、千鶴ちゃんが不安げな声を上げる。

「それって、もしかして、香耶さんなんでしょうか……?」

「で、でもよ、香耶のことは山南さんが…」

「会津中将殿の後ろ盾があれば山南さんも逆らえまい。おそらく俺たちが屯所を出た後、守護職と連絡を取って先回りしたのだろう」

「銀髪の女、なんか香耶に決まってる。会津屋敷のお庭番だ? あの馬鹿、一体なんだってんだ」

眉間にしわを寄せる土方さん。左之さんも呆れたように禁裏の方角へと視線を向けた。

「池田屋のときもそうだったが、あいつの動きはまるで未来が分かってるみてえだな」

「とにかく、守護職の後押しを取り付けたっつんなら好都合だ。俺たちは一番戦闘が激しい蛤御門を目指す」


皆の意識が御所に向かってる中で、僕は一人、小柄な銀髪の後姿を想う。

「総司、香耶君なら大丈夫だ。彼女の期待に答えるためにも、我々は先を急ごう」

「………近藤さん…」

近藤さんは察してくれたけれど、ここで戻れば、香耶さんも、近藤さんも失望させてしまう。だから、今は新選組隊士として御所を守る。
そう思って僕は、後ろ髪を引かれながらもその場を後にした。

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