士
沖田総司side
東北の地で土方さんに会った。
もしかしたら、土方さんの顔を見たら、激情に身を任せて斬りかかってしまうかもしれないと思ったけれど。
許したわけじゃないけれど、それでも。
近藤さんの遺志を継いだのは僕じゃなくて、彼だったから。
僕には、やるべきことがあったから。
だから、一発殴るだけにとどめておいた。
「よかったのかい? あれで」
「嬉しそうな顔で訊かないでくれる?」
僕が決めた道は、みんなとは違えてしまったけれど。
「行こう」
「うん」
この儚いひとを、最期まで守る。
やせた彼女の手をとって、ゆっくりと、歩き出した。
渇望した路
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