路
月神香耶side
携帯電話のアラームが時間を知らせてくる。
目覚めの時間だ。
「香耶さん」
「……んぅ」
眩しい。
ぼんやりと視界に入る眩しい光を、人のシルエットが遮った。
「総司君……?」
「おはよう。よく眠ってたね」
「……う、ん」
総司君が私の手を引っ張って、ベッドから起こさせた。
健康的な手。私も、総司君も。
幕末の時代に暮らしていた私は、どうしてだろうか。総司君のことを忘れていた。
優しくて、眩しいひとだった、ということくらいしか、思い出せなくて。
ただ、あの黄昏の時代を歩む私の路を、照らす存在だった。
幕末の沖田総司と、出会うまでは。
幸福な死を迎えた。
労咳も、死に様を晒すことも、幕末の総司君と一緒だったから、穏やかでいられた。
「香耶さん、なんで泣いてるの?」
「…………、」
次に目を開けたとき、私は戻っていた。あの時代に行く前にいた、平和で光に満ちた現代に。
私の顔を覗き込んだ総司君は、若くて、健康で。
幕末のあの時代をかけらも覚えていなくても。
「怖い夢でも見た?」
「……ううん」
私のそばに、総司君という光がいるかぎり、私は再び幸福のうちに死ねるのだろう。
「幸せな夢だった」
来世では、どうか
別たれた道は、未来でひとつに繋がっている
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