六
月神香耶side
総司君がうちに来て、十日が経った。
はじめは寝たきりだった総司君は、今では庭を歩き回っても苦しくないくらいにはなった。
もともと鍛えた男だったし、彼にはなにか、がむしゃらにやらなきゃならないことがあって、それに向かって駆け足で邁進してるから。
もちろん私は、総司君の“やらなきゃならないこと”がなんなのか知っている。言わないけど。
それに、新選組の末路だって。
私は羨ましかった。
例え新選組は滅びるのだとしても、己のなにもかもを捧げられるほど大切なものを、その胸に抱いている総司君。
対照的に、過去の大切だったものにしがみついて、思いをはせて、そうしなければ自分を保てない私。
私にも、“やらなきゃならないこと”があったらいいのに。
まっすぐ一途に光だけを見て進む総司君が、眩しくて。
「……はぁ」
溜息を吐きながら畑の草むしりをする私の背中に、ふわりと羽織が掛けられた。
え? と思って上を見上げると、そこには総司君が立っていて。
「春先とはいえまだ寒いから」
「ああ、ありがとう……」
私は総司君の羽織に腕を通した。
総司君は、私の横に腰を下ろす。
もしかして草取りを手伝ってくれるのかな、なんて期待したけれど、彼は草を弄りながら私の手先を見ているだけだった。
しばらく経つと、いつの間にかこちらに背を向けていた総司君が、嬉しそうな顔で立ち上がって私になにかを差し出した。
「目、つむって……はい」
「ん。……おおー」
花冠だった。
「くれるの?」
「もちろん」
「……ありがとう」
総司君は、眩しいほどの笑顔で、どういたしまして、と言った。
ああ、眩しいな。
彼は私には眩しすぎる。
吐き出すことは簡単で
分かち合えるものなんてひとつもありはしないのに
今は、まだ
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