17

土方歳三side



ここで、って香耶の胸の中でってのはどういう意味だ。


「でてこい、ゼロ」

香耶が手を伸ばした先に。
何もない空間から黒い何かが揺らめいて、霧が集まるみてえに人の形になった。


「「「!!?」」」


そしてそれが俺らの知る奴になったら、そりゃ驚くだろ。

何もないところからいきなり現れたゼロは、いつものすました表情でそこに立っている。
皆の視線が説明を求めて香耶に集まった。

「ゼロは人ではなく超自然的な自然現象からなる生き物なんだよ」

「分かるように説明しろ!」


※ゼロに関する説明は適当に読み飛ばしてください

「皆にはそれぞれ肉体という器があり、精神…つまり魂があって、それが人間という一個の自然現象を形成している。人間だけじゃない。この世界に住むあらゆる生物がそのように作られている。昨日見た化け物たちだってそうだ。けれどゼロには初めから肉体や精神がないんだ。この自然界じゃ存在しない“何か”で作られている。しかしそのようなものが作られる郷は存在する。それがここ」

言って彼女は自分の胸を示す。

「我々の精神世界。平たく言えばゼロは我々の妄想や想像の集合体なのだよ。こうして産み出されたものは、われわれの常識を凌駕する能力を持ち、神や魔と呼ばれるものとなる。ゼロは別の世界にいた悪魔だったが、この世界にも似たようなものは存在するよ。精神世界(あちら)からこちらに出てこないだけでね。これらの話は今の君たちには関係ない話だ。普通あちらとこちらは、この世界のそれのように完璧に隔絶されていなければならない。以前籍を置いていた世界にはあちらとこちらが交じり合っていた世界があったから、それでゼロはこちら側にいるんだよ。けれど彼にとってこちら側に留まるのは意外に負担になるらしくてね。特にこの世界があちらと完全に隔たれていることにも関わりがあるかもしれない。だから私は自分の精神世界を彼に開放してあげているんだ。精神世界にいるうちは負担が軽減されるからね。今やって見せたようにゼロが何もないところから現れたり消えたりできるのは、私の精神世界を出入りしているからなんだよ」


一息に説明を終えて、香耶はにやりと俺を見た。


「理解できたかな?」

「俺が悪かった」

俺は素直に謝った。



俺と対峙する香耶の後ろでは、総司たちが物珍しげに集まりゼロに触っている。

『僕のことは幽霊みたいなものとでも思ってくださって結構ですよ』

「へぇ〜、さわれる幽霊なんて、僕見たことないよ」

「そもそもあんたは幽霊を見たことがあるのか?」

「やだなあ、言葉のあやだよ一君」

香耶はそれを見て小さく笑みをこぼした。

「ゼロは私の従者と言っていいが、私が呼ばないかぎり普段は私の精神世界に引っ込んでいる。役職には就かせないほうが無難だと思うよ」

「…わかった」

「それからゼロは食事を取らない。用意するのは私の分だけでいい」

お客様かおまえは。


やっぱり俺たちは厄介なのを拾っちまったようだ。
みんな香耶たちの和やかな雰囲気に感化されちまってたが、俺は一人、頭を抱えていた。

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