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雪村千鶴side



「おい、そこの小僧」

「ガキのくせに、いいもん持ってんじゃねえか」

「小僧には過ぎたもんだろ?」

「寄越せ。国のために俺たぎゃぶっ」

がづっ!!

おかしな言葉の切り方をした浪士は、次の瞬間には私の視界から消えていた。



「ハイ君たち。怖がる女の子を囲んで何してるのかな?」

横手から現れたこの銀髪の綺麗な女性が、浪士のこめかみに膝蹴りを入れたらしい。男は地面に滑り込んで、そのままぴくりとも動かなくなった。
一瞬場が唖然となったが、残った浪士たちがいっせいに色めき立った。

「この女、何しやがる!!」

女性は未だ呆然としたままの私の手を掴んで

「行くよ」

「え…え!?」

その場から走り出した。



「待ちやがれ!」

「しつこいな」

「はぁっはぁっ」

こんなに走ってるのに女性は息ひとつ乱れていない。それどころか肩で息をしながら走る私を引っ張り続けてくれた。

狭い路地に入り、後ろに浪士たちが追いついていないのを確認すると、女性は私を家と家の間に押し込んで隠した。私が木の板の影に隠れるのを確認して、彼女は出て行こうとする。

私はあわてて引き止めた。

「あ、あのっ…待ってください! 一緒に隠れたほうが、いいです」

「私の心配は…あれ? 君は………」

彼女は何かに気付いたみたいに私の顔を凝視した。

「ひょっとして昔、東の隠れ里に住んでなかったかな?」

「え…?」


「ぎゃああああああああっ!!!」


「「!?」」

誰かの悲鳴が響き渡って会話は中断された。

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