05

土方歳三side



惣次と香耶が河原で戦ってるのを見つけたとき、辺りは夕焼けで真っ赤に染まっていた。
あの試衛館随一の使い手である惣次が、肩で息をしながら真剣な顔で刀を構えてるってのに、香耶は笑顔だ。

しかしなぜか香耶は攻撃しない。惣次の猛攻を受けては流し、かわす。
まるでいつまでもこの時間が続けばいいというように、楽しそうで。
彼女は刀を手にしていても、それが常であるように自然体で、まるで風に舞う花びらのようにひらひらと動く。
身に纏っている不思議な形の着物と、外套にさしてある透かし編みの金糸の刺繍が残照に浮かんで、幻想的だった。



火灯し頃になったころ、

「惣次郎君、この辺でやめにしない?」

穏やかに言って香耶は身を引いた。
対して惣次は思いっきり顔をしかめて、渋々刀を下ろした。

「まだ勝負はついてないじゃない」

とは言うが、渋面の惣次も分かっているのだろう。勝てないと。



香耶の視線がこちらを向いた。
どうやら今 俺に気付いたらしい。

「あ、としぞーくーん!」

刀を鞘に納めた香耶は、少し離れたところにから走り寄ろうとした。
が、いきなり水辺の地肌に足を滑らせた。


「「「あ」」」


反射的に手を伸ばした惣次を巻き込んで、彼女は盛大に水しぶきを上げた。

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