06
沖田惣次郎side
「けほんけほんっ」
『香耶さん、もう大丈夫ですよ』
泳げないらしい彼女を引き上げたのは、上から下まで真っ黒な、知らない男だった。
え、いつの間に現れたのこの人。まったく気配を感じなかった。
一緒に引き上げてもらっといてなんだけど、すごく怪しいよ。
怪しいけどどうやら香耶さんの知り合いみたい。
「香耶!!」
土方さんも血相を変えてやってきた。
うぅ、と唸ってうずくまる彼女。
「だ、大丈夫!?」
『どうしたんですか!?』
さすがの僕もあわてて彼女の背中に手を置いた。
すると香耶さんは
「………おなかへった」
と言い残して、眠りについてしまった。
…て、え? なにそれ。
男三人の間に暫しの沈黙が下りた。
どうやら彼女は燃料切れ(たぶん僕のせい)だったみたい。
みんなの呆けた顔が面白くて、思わず吹き出すと、土方さんも知らない男もつられて苦笑いをこぼしたのだった。
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