ミハイルに嘘ついた!




「退学することに成った」ミハイルにそう告げた時「は?」という間抜けな声を初めて聴いたのだった。ミハイルはいつも冷静沈着なので、こんな単純な嘘には引っかからないと思ったのだが、私の名演技は相当素晴らしい物だったらしくまんまと引っかかってくれたのだった。「何故だ……、ロストはしていない……よな?」小隊は違うし、大国だとはいえ誰かがロストしたりしたならば、噂の伝達は早い物で一日でわかってしまう。とはいえ、此処で嘘だと明かすのはなんだか惜しい気がしたので、とっさに機転を私はきかせたのだった。



「……校則違反、」ミハイルの肩がピクリと少しだけ動いて、まさかと目を見張った。彼も、校則違反の意味を知らないわけではなかった。大体の物は黙殺されているのだけれど。まさかまさか、と微弱に震えていた。「ばれたのか……?」「うん……」しんみりと、ミハイルと付き合っているのがばれて、校則違反だから退学などと言う壮大なストーリーを描いてしまった。ミハイルはなんてことだ、俯き加減に両手で顔を覆った。



「大丈夫、ミハイルの事は言っていないし、ミハイルは多分ばれていないから」「そうじゃないだろう!なんで、僕を庇うんだ!」罪の重さははかりにかけた所で同じだろう、それなのに、それなのに、と自責の念に囚われているようだった。流石に即席とはいえ残酷すぎる嘘だと罪の意識にさいなまれ始めていた。よし、やめようとこれからどんな罵詈雑言が飛んでくるのだろうと震えながら「嘘です」と言った。一回言った。



ミハイルは「はぁ?!」とこれまた、普段は聞くことのないだろう素っ頓狂な声を上げて、鈍器で殴られたように一時的に動きを止めていたがやがて、怒りで先ほどまでのしんみりとした空気を霧散させた。悲しみから怒りに早変わりだなんて随分と大わらわだ。「なんて酷い嘘を!」「い、いや、咄嗟に……退学に成ったまでしか考えていなかったんだけども、」訥々と悪事を詫びれば、ようやく、彼の怒りがとけて許しを貰えた。まあ、その代り、……なんて言葉がその後に続くのだけれど。流石に此処まで酷い嘘をただでなんて許して貰おうなんて、虫のいい話である。


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