Vol.12/専売特許






「おめーの出番だな」

リボーンは何でもないことのように奏多に告げた。

弥勒はぎょっとして思わず声を上げる。

「リボーンどの!?」

「出番って…」

驚く弥勒やかごめをよそにリボーンは妖怪に向かって小さく顎をしゃくった。

奏多の顔が嫌そうにひきつる。

「いけ、奏多。お前の分野だろ」

「えー…やだ」

その答えにボルサリーノに隠れたリボーンの口がニタリと弧を描いた。

「…いけねーってんなら、これはもうねっっっちょりと鍛え直すしか」

「あ、いけますもう絶好調っス」

さらっと前言撤回した奏多、駆け出した彼女に慌てた弥勒とかごめが叫ぶ。

「お待ちなさい奏多どの!」

「駄目よ奏多さん、一人じゃ無理だわ!」

しかし少女に止まる気配はない。

むしろ雄叫びを上げ一直線に向かっていく。

「ったくあのバカ…!俺が、」

犬夜叉が追い掛けるため体に無理をきかせて跳躍しようとした時だった。

ズガンと一撃、耳をつんざく銃声。

そしてそれは犬夜叉の頬すれすれを掠め、足を止めさせる。

「いーから黙って見てろ」

「…」

硬直した犬夜叉は何も答えなかった。

弥勒とかごめはおどおどしながらも構えていた己の得物を下ろす。

「し、しかしリボーンどの。あれは幻術で人を惑わし、心の闇に巣食う妖怪…一筋縄では」

「だからうってつけなんだぞ」

珊瑚を抱き込んだ弥勒にリボーンは淡々と告げた。

考えの読めない黒が、遠ざかる背中をただ映す。

「アイツの心に、闇なんざ大層なもんは存在しねぇ」

「…リボーンどの?それは一体…?」

「アイツは大概アホだからな。アイツから技術を取れば、バカみてーにひたむきなツナたちへの信頼しかねぇ」

「……」

きぱっと告げられたそれにかごめたちは目を点にした。

そんな単純なものだろうかと無言でいれば、リボーンは補足するように続ける。

「万が一もトラウマも、もしかしたらの恐怖もアイツにはねーんだ。…弱味をつくタイプの幻術はアイツの専売特許だ」

声こそ無感情のその言葉だったが、かごめにはどこか誇らしげに聞こえた。

そう思っていれば、振り返ったリボーンが帽子の縁をつまんでちょっと下げ、そしてニッと笑う。

「百聞は一見に如かずってな」

刹那、前方から轟音が響き渡った。

爆風がかごめのスカートや弥勒の袈裟をバサバサと煩くはためかせ、石つぶてを飛ばす。

見つめた先、雷を纏った巨大な白狼が薙刀を手にした奏多に従う形で唸りを上げていた。

肌を突き刺す殺気が、その場に満ちていた。






prev|next

 BookMark

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -