Vol.10/彼女=?






「はぁ、御子息が…」

翌日、弥勒は泊めてもらった家で相談を受けていた。

内容としては、名主の息子が時折どうにも何かに取り憑かれているとしか思えない行動をとるのだということ。

話を聞いた弥勒は顎に手をやり、フームと考える。

「真っ先に考えられるのは狐憑きなどですが…一度その状態を見てみないことには断定は出来ませんな」

「どうかお願いします法師さま。息子を救ってやってくだせぇ」

「もちろん、尽力致します」

弥勒はキリリと眉を引き締めて言った。

それは本心でもあり、あと数日分の宿は確実だという喜びの表れでもある。

かくして、一行の旅はここでしばしの足止めを食らうこととなった。

もっとも、それに文句をつけたのは犬夜叉のみで、他はあっさり受け入れていたのだが。




†††




「へぇ…珊瑚は弥勒と婚約してるの」

「う…うん。一応」

「奏多ちゃんは好きな男の子とかいないの?」

「いないな。あまり興味もなかったし」

風呂で幾分打ち解けたらしい女3人は和やかに会話していた。

それを聞きながら弥勒はのんびりした調子で言う。

「おなごは好きですな、ああいった話が」

「けっ。何が面白いんでぃ」

対して犬夜叉は馬鹿にしたように言った。

それが聞こえたかごめが反論しようと口を開く横、召喚されたままのビークにもたれたリボーンがニヤリと笑って犬夜叉に言う。

「ガキだな、犬夜叉」

「お前が言うのか、リボーン?」

弥勒の膝の七宝がぼそりとつっこんだがリボーンは無視した。

哀れに思ったのか、リボーンの代わりに奏多が口を開く。

「リボーンは愛人…妾?複数いるよ。しかも皆美人」

「え゛」

その内容にかごめが濁った音を漏らした。

そんなことには構わず、リボーンはやや得意気に言葉を続ける。

「マフィアは女に優しいからな。モテモテなんだぞ」

「スイマセン優しくされた記憶がねっス」

それに挙手し、一人ツッコミを入れるのは奏多だ。

しかしさらにそれに切り返すリボーン。

「お前は例外だぞ」

「そんな特別嬉しくないよ」

リボーンは奏多の返しに無言で銃を構えた。

刹那、すかさずホールドアップする奏多。

かごめは思わず呟いてしまう。

「漫才みたいね」

「こんな命懸けのコンビは御免…あ、なんでもないです」

またしてもいらないことを言いかけて銃を向けられ、奏多はさっと撤回した。

なんともわかりやすい力関係に一行は目をぱちくりさせる。

「…おめーらどーゆー関係なんでぃ」

犬夜叉は半目で二人を見やりながらボソッと突っ込んだ。

顔を見合わせたリボーンと奏多はふむと考える。

「上司と部下だな。主人と下僕ともいうが」

「スイマセン下僕の肩書きは持った記憶ありません」

「そーだな、じゃあパシリにするか」

「あんま扱い変わってなくね?」

「だがパシリはなんかしっくりこねーな。やっぱ下僕だな」

「わぁ…うん…もうそれでいいっスわ…」

奏多は項垂れると降参のポーズを取った。

リボーンは満足そうにニヤリとしてその小さな足を組み換える。

「……いいんだ」

「……まぁ、確かに反論出来ん感じじゃな」

「いやなに、主従関係のクッキリした関係ですな」

部屋のすみ、弥勒たちはひっそりと突っ込んでいた。






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